五話 ページ6
「博臣」
屋上に横になっている、私を呼び出した張本人に声をかける。
「A、遅かったな」
「いきなりメールしておいて、それはないじゃない」
横に腰掛けて、お弁当を開く。
スッと博臣の手が伸びてくる。ぺし、と叩き落とすと拗ねたように博臣はこちらをみた。
「自分のあるでしょ?」
「それはAの手作りだろう?それが食べたい」
「どこの子供よあんたは....。可愛い可愛い美月ちゃんに作ってもらえばいいじゃない」
「なんだヤキモチか」
すこし嬉しそうに、でもなにかをたくらんでいるような顔つきで私の顔をのぞき込んできた。
これが未来ちゃんでいう「不愉快です!」なのか。すこし気持ちがわかった気がする。
「とても前向きな思考で。そもそも私達付き合ってるわけでもないじゃない」
「....まあ、そうだな」
「はやく彼女作って、その人に作ってもらいなさいよ」
「....Aも、はやく彼氏できるといいな」
「こう見えても私、元彼いるからね」
「まて、それは初耳だぞいつの話だ」
「1年の秋から2年の春までかな」
「知らなかったな」
あんたのせいで別れたんだけどね、なんて、悔しいから言わない。
なんだかんだで博臣と行動を共にしていたから、向こうが勘違いをしたのだ。2年になって、彼ともクラスが別になったのも原因の1つである。
「ねえ博臣」
「なんだ?」
「もし、私が居なくなったらどうする?」
嫌な例えだな、と博臣は苦笑した。
私がみんなの中でどんな存在なのかを確かめる手っ取り早い方法だと思うのだけれど。
「どうするだろうな、その時によるさ。まぁでも、秋人は探すだろうな。俺はーーーーー....そもそも名瀬の管轄下から逃れることの方が不可能だな」
「そんな理屈はいいから、博臣はどうするの」
「....探す、と言って欲しいのか?」
「そうね....、私はみんなに必要とされてるのかな?って思うから」
キッ、と博臣が私を睨む。「俺たちを信用できないのか」と言われているようで、目を逸らした。
お弁当箱の中でタコさんウインナーが踊っている。箸でつまんで、そのまま口に放り込んで、ろくに噛まずに、喉へ押し込んだ。
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レナミン♪(プロフ) - 続きが気になります!更新がんばってください! (2013年11月13日 1時) (レス) id: 116d01a385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千景 | 作成日時:2013年11月12日 19時