二話 ページ3
A、と呼ばれた気がして廊下の方を見た。
そこにはやはり博臣がいて、私は駆け寄る。
どうしたの?と聞くと博臣は辺りをチラチラと見て、耳元でこう言った。
『虚ろな影って、知っているか』
“虚ろな影"、随分と面倒くさい妖夢の名前を出すものだ。もちろん知っているので私は首を縦に振った。
そうか、と博臣は呟くと壁に背をもたれかけた。
「この街に、近々くる」
「....そう、面倒くさいね」
「あぁ、実にな。」
あと、と1つ付け足すように博臣は言った。
『この高校に、呪われた血の一族、栗山未来がきた』と。
それはとっても、面倒くさそうだ。
私、九 Aはこの街で異界士をしている。妖夢討伐を専門とした職種なのだが、私は妖夢を殺すことを好いていない。
異界士としてどうなのかと言われるとそれは失格だと言うしかないだろう。
私は母と父、双子の妹を妖夢に殺されている。
ちょうど私が小学生5年の冬に、家の近くで異界士が討伐に失敗した妖夢が我が家を襲撃した。
地に染まる世界、を私は初めて見た。
母と父、妹は果敢にも立ち向かった。だがただでさえ気の立っている妖夢相手に、3人という人数は無謀だったのだ。
「い、や」
私は怖くて、怖くて。立ち向かうことが出来なかった。
父が死に、母が死に、妹が最後に死んだ。「お姉ちゃ、ん、逃げて....お願い....逃げて....」その声は今でも鮮明に思い出す事ができる。
弱虫な、私。臆病で、立ち向かうことをせずに、家族が死んでいくのを見ているしか出来なかった。
そこに、名瀬が応援にきた。一足遅かったか、と返り血を浴びて放心状態の私を見て、言った。死んでいると思ったのだろう。
『君、生きているの?』
と。博臣が私に声を、かけてくれて、コクリ、と頷く。
生存者がいたぞ!と大人が叫んで、私は助かったのだ。
家族の血が染み込んだ服をまだ私は大切に持っている。唯一の遺品。血だけれど、自分への戒めだ。
妖夢を殺すことを好いていないという表現は少しおかしいかもしれない。どちらかといえば、妖夢を避けているのだ。
「虚ろな、影」
私は変わることを望んでいた。
+++
よかった。文字数足りた。今回はそれだけです。安心しました。
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レナミン♪(プロフ) - 続きが気になります!更新がんばってください! (2013年11月13日 1時) (レス) id: 116d01a385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千景 | 作成日時:2013年11月12日 19時