story21 ページ22
.
好きな人と見る花火は、とても綺麗で、
とてもロマンティックで、
この上なく、輝いていた。
いつもマンションの窓から見ていただけの、小さかった花火が、
こんなにも大きく、弾けていた。
伝えなきゃいけない事があるけれど、
そんなのも、どうでも良いくらいに。
けど、刹那。
微かに聞こえた、棚澤さんの声。
''Aさんの事が、好きなんです。''
本当に少ししか聞こえなかった。
だから、聞き間違いかもしれない。
けど、けど
嬉しくて、花火が見えない。
気付いたら、顔を花火に向けてる棚澤さんの横顔を、
ずっと見ていた。
結局花火なんて、数十分しか見られなかったけれど、
それでも今日は、楽しかったな。
「あ、Aさん。」
「はい?」
名前を呼ぶと嬉しそうに振り返ってくれる。
何も無かったように振る舞う彼女。
俺も、何も無かったように振る舞った。
「楽しかったです。大阪に行く前に、いつか、もう一回逢いませんか?」
少しだけ空いた距離は、少し気まずいから。
2メートル程空いてるけれど、その声はしっかり届いた。
「勿論です!落ち着いたら、また連絡しますね。」
「待ってます!」
Aさんを家まで送って、自分の家まで帰った。
花火を見た後だと、殺風景にみえてしまう自分の部屋。
ある意味花火。散らかってるから。
次はいつになるかな。
Aさんが大阪に行くまで、あと三週間。
その時まで、どれくらい貴女に会えるかな。
せめて、もう一度だけ、
また貴女の弾くピアノが聴きたい。
そして今度はちゃんと伝えたい。
「好きだって言えたら、どんなに楽かなぁ…」
言ったのに伝わっていない。
それが一番辛い。
そんな後悔の気持ちがこもった独り言は、静かに消えていった。
枕が少しずつ濡れていき、いつの間にか鼻をすする程になっていた。
「好き…」
着替えもせずに疲れ果て、そのまま眠りについた。
57人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
So-mei.(プロフ) - Daaaさん» 返信遅れてすいません!私も…書きながらたなっちとの子ども欲しいなぁと思いました(( ありがとうございますー!褒められて伸びるタイプなので嬉しいです笑 また御縁がありましたらよろしくお願い致します! (2020年8月29日 18時) (レス) id: f49ce891b4 (このIDを非表示/違反報告)
Daaa(プロフ) - 遅くなりましたがご完結おめでとうございました!!最後たなっちくんとのお子さん...想像....妄想するだけでドキがムネムネ...(こら)短編と違って長編は本当に難しいですよね、その中で素敵な作品を作り上げたSo-mei.さん、とても素敵です。お疲れ様でした(^^) (2020年8月26日 6時) (レス) id: 4b5c938df8 (このIDを非表示/違反報告)
So-mei. - Daaaさん» えっ、寧ろこんなのを勉強して大丈夫ですか?こちらこそ勉強させて頂いてます((素敵な表現、もしかしたらお借りするかもしれませんが…その様なことが無い様に気を付けます!こちらこそよろしくお願い致します^^ (2020年7月6日 20時) (レス) id: 5021305aba (このIDを非表示/違反報告)
Daaa(プロフ) - So-mei.さん» とても読みやすくて私も凄く勉強になりました...(勝手に勉強させて頂いて申し訳ない...)こちらこそ本当に感謝しかございません、今後とも宜しくお願い致します(^^) (2020年7月5日 19時) (レス) id: 4b5c938df8 (このIDを非表示/違反報告)
So-mei. - Daaaさん» ええええ!?あっ、ちょっと待って下さいね?心の準備が…。え、え?ヤバ…。あの、こちらこそ、ありがとうございます。なんか、こんな妄想に塗れた汚い作品読んでもらってありがとうございます…。ブラマジも見てくださってるんですね…!本当感謝。なんかすいません… (2020年7月5日 14時) (レス) id: 5021305aba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:So-mei. | 作成日時:2020年6月26日 18時