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私の仕事は、普通の会社員だ。
新卒で有難いことに採用され、順風満帆な社会人1年目。
上司も先輩も、驚くほど優しいし、会社もとてもホワイト。
本や漫画で見るよりもずっと、楽しい生活を送れていた。
そんなある日。
いつもより仕事を早く終えることが出来て、定時になった瞬間、
会社を出た。
いつも通り静岡駅まで歩いて、改札を通ろうとしたけれど、
折角時間があるから、少し寄り道をした。
目的地は静岡駅内にある、ストリートピアノ。
この時間は退勤ラッシュで、人通りも多い。
曲を聴いてもらうには絶好の機会だった。
けど、私の弾く曲は、クラシックや流行りのJ-POPでもない。
学生の頃から好きだった、「ボーカロイド」。
社会人になった今でも、ずっと聴き続けている。
ボカロは流行ったものは有名になるが、そうじゃない曲も数多くある。
あまり知られていない名曲というのは、ボカロは特に多いのだ。
そんな名曲を耳コピして、ピアノで弾くのが、私の数えれる程しかない趣味だった。
勿論、有名じゃない曲を、わざわざ立ち止まって聴く人なんてそうそう居ない。
だけど今日は珍しく、1人立ち止まって聴いてくれた。
弾き終わった後、椅子に立てかけていた鞄を持って立ち上がった。
その時。
「あの…ピアノ、聴いてました。すごく上手ですね。」
黒い帽子を被って、白いマスクを付けて。
変装をしてるのかと思うくらい、顔が見えなかった。
そして、帽子から少しはみ出て見える、ミルクティーのような色をした髪の毛。
それでも、嬉しいものは嬉しいもの。
勇気を出して話しかけてくれた人には、丁寧に受け答えするのが、私の決まりだ。
「ありがとうございます。ボカロ曲って、聴いてくれる人少ないんですよね。」
「だから、聴いてくれてとても嬉しいです。」
軽く会釈をした後に、にこっと笑ってそう言った。
相手の男性も、相槌を打つように笑ってくれた。
「僕もボカロ好きなんですよ。すごくオタクで。」
目を細めてそう笑う。
なんだか、とても素敵な人だなあと思った。
「あ、またここで弾いてくれますか?弾くんだったら、また聴きたいです。」
そう言ってくれたのは、彼が初めてだった。
「はい、勿論です。是非聴きに来てください。」
そしてもう一度、軽く会釈をした。
顔は全然見えなくて、スーツも着ていなかった。
学生なのかと思ったけれど、そういう感じでもなさそうだった。
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So-mei.(プロフ) - Daaaさん» 返信遅れてすいません!私も…書きながらたなっちとの子ども欲しいなぁと思いました(( ありがとうございますー!褒められて伸びるタイプなので嬉しいです笑 また御縁がありましたらよろしくお願い致します! (2020年8月29日 18時) (レス) id: f49ce891b4 (このIDを非表示/違反報告)
Daaa(プロフ) - 遅くなりましたがご完結おめでとうございました!!最後たなっちくんとのお子さん...想像....妄想するだけでドキがムネムネ...(こら)短編と違って長編は本当に難しいですよね、その中で素敵な作品を作り上げたSo-mei.さん、とても素敵です。お疲れ様でした(^^) (2020年8月26日 6時) (レス) id: 4b5c938df8 (このIDを非表示/違反報告)
So-mei. - Daaaさん» えっ、寧ろこんなのを勉強して大丈夫ですか?こちらこそ勉強させて頂いてます((素敵な表現、もしかしたらお借りするかもしれませんが…その様なことが無い様に気を付けます!こちらこそよろしくお願い致します^^ (2020年7月6日 20時) (レス) id: 5021305aba (このIDを非表示/違反報告)
Daaa(プロフ) - So-mei.さん» とても読みやすくて私も凄く勉強になりました...(勝手に勉強させて頂いて申し訳ない...)こちらこそ本当に感謝しかございません、今後とも宜しくお願い致します(^^) (2020年7月5日 19時) (レス) id: 4b5c938df8 (このIDを非表示/違反報告)
So-mei. - Daaaさん» ええええ!?あっ、ちょっと待って下さいね?心の準備が…。え、え?ヤバ…。あの、こちらこそ、ありがとうございます。なんか、こんな妄想に塗れた汚い作品読んでもらってありがとうございます…。ブラマジも見てくださってるんですね…!本当感謝。なんかすいません… (2020年7月5日 14時) (レス) id: 5021305aba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:So-mei. | 作成日時:2020年6月26日 18時