#49 帰ろうか ページ49
みぃつけた。
それが最後の言葉だった。
僕は彼女の笑顔を見届けて目を閉じる。
もう怖いものは見えなかった。
彼女の方へAくんが走って駆け寄る。
あぁ。やっと会えたんだね。
＊＊＊
「ヒロト。大丈夫？」
目が覚めた。僕はひとりで冷たい床に倒れていた。あまりの寒さに体が震える。状況が上手く飲み込めずぼんやりと部屋を見渡す。すぐ側にリュウジがいた。それを見て我にかえる。
「あれ、僕……」
「大家さんに開けてもらった。警察も来ている。立ち上げれそうか？」
「なんでここに……」
「玲名が教えてくれたんだ。あいつも下で待っているよ」
「そう……」
外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。何とか起き上がって警察や救急隊員の人に色々聞かされた。よく覚えていなくて曖昧な答え方しかできなかった。僕が、何があったのか彼がどこに行ったのか聞いても誰も話してはくれなかった。
部屋から出る時はついでにお風呂場でぬいぐるみを見た。ぬいぐるみは浴槽の淵に横たわっていた。ナイフが床に落ちていた。
「ヒロト！」
マンションのエントランスで父さんが待っていた。僕が降りてきたのを見て駆け寄ってくると抱きしめられた。驚いてしまって何も言えなかった。「無事で良かった」と泣いている父さんの隣に玲名が立っていた。僕は動揺しているのを隠すために笑ってみせた。
「どうしたの、みんなして。僕なら大丈夫だよ」
「無理して笑うなよ」
玲名が言い放った。どうしてだろう。緊張の糸が切れたみたいだった。僕の目からボロボロと大粒の涙が溢れてきた。
「嫌なら嫌って言ってよ。悲しいなら、怖いならちゃんと、言って」
「……うん」
「私たちの家に、帰ろうよ」
そうだね、と僕は呟いた。
外に出ると辺りは真っ暗で相変わらず寒かったけど、透き通った寒空に浮かぶ月は僕たちを優しく暖かく照らしてくれていた。
＊＊＊
僕がそれを知ったのはテレビだった。
行方不明だった同級生たちがそれぞれ遺体で発見されたと。
全員自宅で発見されたらしくそれぞれ特に目立った傷は無く発見された。いなかっったはずの場所に突然現れた死体の謎は深まるばかりでこれから調査が行われるようだ。
もちろん僕も警察と何日もかけて事情聴取が行われた。ひとりかくれんぼのことも聞かされたが「そんなのあり得ない」と首を傾げられるばかりだ。だけど“前例”があるからには否定できないようだ。
そしてAくんが亡くなった話も、その時聞いた。
#50 永遠より長い風の中で生きていく→←#48 最期の言葉
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「イナズマイレブン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
