#42 嫌だよ ページ42
放課後になるといつもの集団下校のため全校生徒が集まった。教員の話が終わってそれぞれ学区ごとに帰宅を始める。僕は風丸くんと並んで歩いていた。誰も僕たちに近寄ろうとしなかった。
「俺の名前どうしてわかったの？」
「……そういえばどうしてだろう。ふと頭の中に浮かんできたんだ」
そう言うと風丸くんは笑った。つられて僕も笑ってしまった。なぜか頭の中にぼんやりと「風丸くん」という名前が浮かんでそれを口に出していたのだ。あの女の子が教えてくれたんだと思う。もう記憶がごちゃごちゃになってしまっているのだ。
「そうか。そりゃ、いい」
「え？」
「いや。なんでもない。ヒロト、お前はこの後俺の家に来い。ひとりかくれんぼのやり方を教える。これでお前が上手くいけばみんな帰ってくる。お前の大切な家族もいなくならない」
まるでいつもの会話と変わらないようだった。今朝のあの態度とは全然違う。風丸くんはいつもよりもずっと落ち着いていて余裕があるようだった。さっきまではあんなに人が変わってしまっていたようだったのに。
僕も余裕ぶって彼の話を聞いた。ひとりかくれんぼを失敗すれば戻ってこられない。負の連鎖は続く。そして僕は、吉良ヒロトはそれを止める最後の砦だということ。何度も何度も同じ話を繰り返されながら僕は風丸くんの話を聞き続けた。
そうこうしているうちに風丸くんの自宅に到着した。彼は僕にそっと耳打ちした。
「みんなに言い訳してこいよ」
遊びに行く、とでも誤魔化せばいいのだろうか。僕はしばらく考えた後に玲名たちのところへ駆け寄った。
「ごめん。かぜ……いや、Aくんに本を借りる約束しててさ。ちょっと一緒に上がって借りに行ってくるから先に行っててよ。すぐに追いつくから」
「そんなのAが持っておりてくればいいじゃん」
察しのいいリュウジがそう言った。僕は一瞬黙り込んだが「Aくんが折角だからって言うし。大丈夫、すぐ戻るよ」と笑って誤魔化した。するとそれ以上は何も問い詰められず「早く戻れよ」と言われた。嘘をつくのに良心がかなり傷つく。
すると玲名だけ立ち止まって僕を見て言った。
「私は嫌だよ」
「……え？」
「嘘は、嫌だよ」
玲名はそう言って歩き出した。僕は彼女だけが全部わかっているんだということを思い知った。
風丸くんが「ヒロト」と呼んだ。僕は黙って彼の後ろをついていった。
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
