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#40 選択 ページ40

「ひとりかくれんぼ……」

僕はそう呟く声を聞いて振り返った。玲名が顔に影を落としてぶつぶつと何かを言い出した。それはいつもの彼女では無かった。急に嫌な予感がして彼女の腕を掴んで引っ張った。

「どうしたの玲名。ねぇってば」
「私、遊園地に行きたい」
「遊園地……?」

とっさに教室を見渡した。クラスメイトたちの表情は冷たい。すると彼は立ち上がって玲名の傍に歩み寄った。まるで玲名は子どもになってしまったみたいだった。今にも泣きだしそうで僕とも目を合わせようとしてくれない。

「八神、遊園地に行きたい?」
「うん」
「やめろ玲名。そいつの話なんて聞くなよ。遊園地なんて無いんだ」

僕は彼の言葉を遮る。だけど止められない。

「そっか。じゃあ俺が行き方を教えてあげるよ」
「本当に?」

彼は玲名を小さな子どもをあやすようにそう話しかけた。玲名はたちまち笑顔になって僕の手を振り払おうとする。僕は離さない。そして彼女は嫌がって僕を押し返した。取っ組み合いのようになっていた。

「やめて!」
「玲名目を覚ますんだ! ひとりかくれんぼなんてしちゃいけない!」
「いーーーやーーー」

とうとう彼女は泣き出してしまった。子どもがぐずって泣いているみたいに声を荒げて。さっきまで完全に傍観者だったクラスメイトたちが一斉に駆け寄ってきて僕と玲名を離そうとした。僕は必死に抵抗したが振りほどけない。ついに玲名の腕を離してしまった。僕は教室の床に倒され取り押さえられた。
彼がそんな僕を見下ろした。玲名は女子たちに慰められながら泣いている。

「……これでわかったかヒロト。八神もひとりかくれんぼに憑りつかれてしまったよ。でも彼女は”あいつ”を見つけられないと思う。お前たち孤児院で育った子どもは特にな。遊園地から出られない」
「やめてくれ。玲名は僕の大切な友だちで、家族だ。玲名だけじゃない。僕には大切な友だちや家族がたくさんいるんだ。お願いだから傷つけないでくれよ……!」
「そういう友だちとか家族だとか言いぶっているやつ……俺、嫌いなんだよ」

彼は僕の頭を踏みつけた。クラスメイトたちの笑い声が聞こえてくる。孤児、捨て子……色んな罵声も聞こえてきた。

「家族を失いたくないんだろ? 自分を犠牲にするか家族を犠牲にするか。選べよ、吉良ヒロトくん」

僕は唇を嚙み締めた。答えはもちろん決まっていた。今はただ彼が憎くて仕方がなかった。

「じゃあやり方を教えてくれよ。風丸一郎太くん」

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設定タグ:イナズマイレブン , 基山ヒロト , ホラー   
作品ジャンル:ホラー
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沙夜(改)(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました!まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜(改)(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます!読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます!これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜! (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
- 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙夜 | 作成日時:2018年2月11日 18時

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