#32 不安 ページ32
Aくんは呆気した顔で僕を見た。そして玲名はとても険しい表情をしていた。僕はそんな二人に何の話をしていたのか問い詰める。
「ちょうどこの後ヒロトのお見舞いでも行こうかなって思って、八神と話していたんだ。もう体調は大丈夫なのか？」
「あぁ。そうなんだ。うん。午後の授業は出ようかなと思って。体調も大丈夫だよ」
良かった、とAくんは笑った。だけど玲名の表情から何か違う話でもしていたんだろうなとぼんやり思った。特にこれ以上問い詰めるのはやめようと思い僕もそれきりだった。自分の席に戻る。
この教室は空き教室でみんなそれぞれ自分の荷物だけを持ってきたようだった。僕の荷物も玲名が気を使ってくれたのか持ってきてくれていた。さすが気が利く。
僕が戻ってきたのに気が付いてクラスメイトたちが話しかけてきてくれた。そのおかげもあって僕の不安も少しだけ和らいだ。
その後の午後の授業は目を見開いて集中して受けた。またあの嫌なものを見てしまわないように。
＊＊＊
放課後。
僕たち全校生徒はグラウンドに集まり各学区ごとに整列した。この日は先生たちも緊張しているのが分かった。そして校長先生の話も重い内容だった。もちろん二学年一斉失踪の件が取り上げられた。
「この後もし取材で声をかけられても絶対に答えないでください。また、ニュースによれば過去に他の学校でも生徒が複数人行方不明になる事件もあったそうです。各地で子どもが失踪する事件が絶えません。みなさんも外出の際は気をつけて、決して危ない場所に行ったり怪しい人についていかないようにしましょう。また今日は学校の立ち入り調査があるので全部活動を中止します」
この日は部活動生を含め全生徒が集団下校となった。僕は早く家に帰りたくてたまらなかった。玲名の様子もおかしい。やっぱりAくんに何か言われたのだろう。Aくんが集団の前のほうで他の人と話している隙に僕は玲名の隣に並んで歩いた。
「れーなちゃん。何かあったかい」
「ちゃん呼びするなよ気持ち悪いなぁ」
「そんな怖い顔しなくても」
話しかければいつもの反応をしてくれる。そのノリに続いて話を続ける。
「僕がいない間何かあったの？」
「うーん」
珍しく玲名が話すのを渋っていた。あまり無理に聞くことでもないかなとこの話題から身を引こうと思った。だけど彼女の目を見てなんとなく察した。
「Aくんのことだったりするのかな」
「……帰ってから話す」
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
