#31 奇妙な言葉 ページ31
見えないけれどクラスメイトみんなが私を見ているような、そんな視線を感じた気がした。だけど談笑する声が聞こえる。寒いのに額に汗が浮かんできた。私はAから目線を逸らせない。
「菊池、俺の隣にいた山崎、他クラスの行方不明者。みんなが何をして、どうなったのかを俺は知っているんだ。興味ない？」
「はぁ？ 知らないよそんなの」
私はそう笑って返した。するとAが「あはは」と笑い出したかと思うと他の班員もみんな笑い出した。それがとても不気味だった。今すぐにでも席を立ちたかった。
「八神は家族が大切だよな？」
「……そうだね」
「このままじゃヒロトもいなくなってしまう」
「なんであいつが」
私はヒロトの話を思い出した。ずっと怖いものを見てしまうって。目を閉じてはいけないって。私はヒロトの話を信じていないわけではない。できれば信じてあげたいさ。だけどそれにはあまりにも非現実すぎるのだ。私はどうすればいいのかわからない。今ここを抜け出す度胸だって、ない。Aの話が私を引き寄せるのだ。
「八神はひとりかくれんぼって聞いたことある？」
小さい頃にお父様が言っていた。
「玲名はもっと人を信じていいんだよ」って。
「給食当番！ そろそろ片付けを始めろー」
先生の声が教室に響いた。そしてクラスメイトたちが立ち上がり食器を片付け始める。私は急に体の力が抜けた気がした。さっきまで張りつめていた緊張感が一気に引いていってしまった。
Aはそれ以上何も言わないまま食器を運びに行ってしまった。他の班員もさっきまでの変な態度は見えず普段通りに戻っていた。「どうしたの玲名。お腹いっぱい？」と声をかけられて急いでおかずを口にかき込んだ。
ひとりかくれんぼという言葉はどこか前に聞いたことがある気がしたが内容は思い出せない。だけどそれはとても違和感のある言葉だった。私は頭を抱えて一生懸命思い出そうとする。当番が食器や鍋とかを戻しに教室を出て行った。私は机を戻してずっと考え込んでいた。
すると後ろから背中をつつかれた。それに驚いて思い切り振り返る。もちろんAだ。にこにこ笑って私を見ているのが不気味だ。
「この後ヒロトに会いに行ってくる」
「……わざわざ私に言わないで」
「そう」
Aはどこか残念そうな顔をした。
「僕に何か用でもあった？」
その声に私もAもすぐに反応して振り返った。ヒロトが立っていた。
「で、なぁに？」
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
