#29 思惑通りに ページ29
「何が……？」
玲名が聞き返す。僕は自分でそう言っておきながら「嘘だろ」と疑っていた。だけどそうとしか思えないのだ。貧血気味の頭でこれでもよーく考えた結果だ。
「僕、一定の時間目を閉じるか寝てしまうとおかしなものが見えるようになったんだ」
「はぁ？」
「どうしよう。目を閉じるとさ、怖い女の子や女の人が現れるんだ」
「そんなの……あり得ないだろう」
「どうしよう玲名。怖いよ。僕が何をしたっていうんだよ」
「お前ちょっと落ち着け」
「僕はおかしくなんかない。遊園地も女の子だって……知らないんだ。知らないんだってば」
「落ち着けってば！」
玲名が僕の胸ぐらを掴んでぎゅっと引き寄せた。それに僕は驚いて黙り込む。彼女は本気で怒っていた。そのまま二人共黙ったままだ。静かな廊下に息遣いだけが聞こえる。口端から血が流れるのがわかった。玲名は微動だにしない。
「……玲名、離して」
やっと声を出すことができて彼女にそう言った。するとあっさりと手を離してくれた。僕はティッシュで口元を拭いた。確かに僕はちょっとパニックになっていた。玲名のおかげで少し落ち着くことができた。
「ほら。保健室に行こう」
「うん。ごめん」
「いいよ」
ふと昔大喧嘩した時のことを思い出した。
＊＊＊
ヒロトが教室を出てもしばらくは教室のパニック状態は止まなかった。清掃員や他の先生たちがやってきて床の掃除を始めた。当然授業は中止だ。机は一部廊下に出して、ブラシで汚れを洗い流す。俺や他の生徒たちは教室の端っこに立ちっぱなし。一部の生徒は手伝っていた。
「Aもああいうの苦手なん？」
「うん。血とかグロイものは気持ち悪くなっちゃうんだ」
「それにしてもヒロトもどうしたんだろうな。あれも急に出てきてさ」
「さぁ」
俺は笑ってそう流した。いよいよヒロトも自分の状況に気が付き始めた頃だろう。彼は勘が良いから。初日からそうだった。さりげなく疑いをかけてきて、誤魔化せばそれ以上追及してこない。今までの中でもひと際違う人間だ。
利用できるならとことんと、だ。
まだ早いかもしれないけれどそろそろやってしまっても構わないだろう。
どうか今度こそは……
「菊池、山崎、青木に水上のことだけどさ。俺、先生たちが話しているのをこっそり聞いちゃったんだよね」
「え、何を？」
「誰にも言うなよ？」
「なんだよA。もったいぶって」
「ごめんって。あのさ……」
今度こそは成功しますように。
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
