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#28 痛みと発見と ページ28

クラスは大パニックだった。僕は口の中の激痛と出血で動けない。先生がそんな僕のもとに駆け寄ってきた。隣の席の子がティッシュを差し出してくれた。

「大丈夫? どこを怪我したの?」
「あの……口を切って」

話すたびに口の中が痛い。床に広がるグロテスクなものは確かにみんなにも見えていることが驚きだ。つまりあれは夢じゃなかった。教室の騒めきがより不安を掻き立てられた。
先生に保健室へ行くよう言われると、僕のそばに玲名がやってきた。彼女はこんな状況でも冷静だった。

「私が連れていきます」

玲名の上履きが血で汚れてしまっているのが見えた。完全に血だまりを踏んでいる。それでも彼女はおかまいなしだった。なんでそんなに平気でいられるのかが逆に怖い。
ちょうど僕らが教室を出るときに、両隣のクラスから先生たちが騒ぎを聞きつけて覗きにきた。口元が血だらけの僕と教室の惨事を見て「おえっ」と咳き込んでいた。
隣のクラスの前を通りがかる時なんて他の生徒たちにじっと見られた。少し恥ずかしかった。
玲名は教室から持ち出した箱ティッシュをいつの間にか持っており、僕に差し出していた。二人で廊下を歩く。やはり冷えていて寒い。

「何があったんだよ」
「……なんか、熱っぽくて。眠かった。そしたら夢を見て……夢が現実になって」

あまり口を動かさないように話した。昨日の理科室でのことと同様、また僕が寝ぼけて口を嚙んだとでも思われるだろうが夢の内容を話した。彼女は眉を寄せて話を聞いてくれた。床の血のことはわからないと話した。

「他は覚えていないの?」
「うん。見たまんまだよ」
「私にはお前がおかしくなったとしか……」

そう思われて当然かもしれない。玲名は黙り込んでしまう。沈黙のまま歩いた。
僕は考える。本当にどうしてしまったのだろうか。ここ最近はおかしな夢ばかりを見ると思った。だけどそれが今日現実になって現れた。心当たりなんてあるわけない。どうして……いつから……なぜ僕が……。考えすぎて頭が痛いし出血で眩暈もする。僕はそっと目を閉じた。




「お兄さん。可哀想に」

女の子の声だ。玲名じゃない。僕の目の前に立っていた。

「君は誰なんだ……」
「私のこと覚えていない?」
「知らない」
「そう……残念」




「おい! ヒロト!」

玲名の声に僕は我に返った。女の子は消えていた。玲名は顔を真っ青にして僕の肩を掴んでいる。

「玲名?」
「お前誰と話しているんだ」
「僕、分かったよ」

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設定タグ:イナズマイレブン , 基山ヒロト , ホラー   
作品ジャンル:ホラー
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沙夜(改)(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました!まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜(改)(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます!読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます!これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜! (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
- 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙夜 | 作成日時:2018年2月11日 18時

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