#23 遊園地にて ページ23
気づいたら遊園地にいた。
といっても本当に小さな遊園地だ。それでも観覧車はあるしジェットコースターもある。
ただひとつだけおかしいのは、誰もいないこと。
僕はそこに一人で立っている。
明るいBGMが流れてきた。その音楽につられて僕はふらふらと歩き出す。音楽の方へ歩いていくと綺麗に輝いているメリーゴーランドがあった。
さっきまで誰もいなかったはずなのに、そのメリーゴーランドの周りだけには人がいた。だけどみんな小さな子どもたちだった。周りには大人の姿はない。本当に子どもだけだった。
「お兄さんは誰？」
足元に小さな女の子が立っていた。僕は驚いて一歩後ろに下がる。
「ここには子どもしかいないの？」
「うん。そうだよ」
女の子はぬいぐるみを抱きしめていた。僕はまだその子の言葉が信じられなくて、辺りをきょろきょろと見渡した。
親らしき人々は全くいないのに子どもたちは構わず楽しそうに遊んでいる。それを見ていると僕までその輪の中に入りたくなってしまう。メリーゴーランドなんて僕の年になると乗りたいとも思わないはずなのに。一体何人の子どもがいるのだろう。
そんな不思議な状況なのにいつの間にか僕は子どもたちのほうに走っていた。「混ぜてよ」と言いながらその輪の中に入っていこうとする。子どもたちもそれを歓迎するかのように笑っていた。なんだろう、凄く楽しい気分だった。
メリーゴーランドの柵の前まで来た時だ。一人だけこちらをじっと見ている男の子がいた。その子は馬にまたがっている。彼の視線に気がついて僕も見つめ返す。なんでこちらを見ているんだろうと思った時だった。さっきの女の子が隣に立っていた。
「お兄さん、あの子の知り合い？」
「いや。違うけれど」
知っている子ではないはずだ。だけどどうしてあんなに目を引くのだろうか。
「……いや、まさかね」
思わず声に出して呟いていた。その男の子の顔をじっと見つめる。彼も目をそらそうとしない。僕はこの子を知っているはずだ。そんな予感しかしなかった。
「お兄さんが鬼？」
「えっ？」
一気に鳥肌が立った。女の子が僕を睨んでいる。下唇をぎゅっと噛み締めて血が滲んでいる。
「駄目だよ。誰も連れて行かせない」
いつの間にか子どもたちが僕を囲んでいた。みんな不気味な顔をして笑っている。子どもたちが僕の体にすがりつく。動けない。苦しい。
「菊池くん！」
意識が遠くなる中で気づいたら叫んでいた。あの子どもはきっと菊池くんだと思った。
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
