#22 心配させないで ページ22
姉さんとの会話を終えて部屋に戻るとリュウジが寝転んでゲームをしていた。「何の話だったの？」と聞いてきたので「姉さんが東京に転勤だって」と答えた。リュウジはゲームを操作しながら「まじかー」と呟いた。
僕とリュウジは同室で、他の子たちも男女に分かれてそれぞれ二人から三人ずつの同室になっている。
「どれくらい？」
「一ヶ月だって」
「そこそこ長いんだ」
「うん」
「なんか落ち込んでる顔してるな」
彼の言葉に僕は思わず自分の顔に手をかざして隠した。「おいおい」とリュウジの苦笑いの声が聞こえる。今日はずっとこんな調子だ。僕はため息をついてベッドに腰掛けた。
「今日は色々ありすぎた」
指の隙間からリュウジを見ると彼は首を縦に振っていた。これに関しては彼にも本当に申し訳ないと思った。
「あの後Aは普通に家に帰って行ってたよ」
「そっか。良かった」
「誰かの悪口を言うのはダメなことだけど、俺はあまり関わらない方がいいと思ってるから。俺はそうする。でもヒロトはヒロト通りにすればいいんじゃない」
「……玲名は何か言ってた？」
「うーん。めっちゃ怒ってた」
「怒ってたぁ？！」
僕は思わず身を乗り出して叫んだ。隣の部屋から壁を叩かれる音がした。しかも隣は玲名たちの部屋である。僕らはあまり聞こえないように、とそっと声をひそめた。
個人的に怒らせたくない人の中でも玲名はトップの方である。たった一度だけ僕は彼女を物凄く怒らせたことがある。その時も圧倒的に僕の方が悪かった。だけど意地張って彼女と反発した。あんなことは二度とないようにしよう、と思っていたのに。
リュウジも玲名を怒らせるのは致命的だ、ということを知っている。僕を焦らせるためにわざと話を盛っているだけかもしれないとも思ったが。わざわざそんな嘘を言う必要も無いだろう。
「とーってもイライラしているみたいだったよ。怒っていると言っても、玲名だって心配しているんだから。あんまり心配させないであげなよな」
「……そっか」
「ヒロトだって、何かあったならヘラヘラしてないでちゃんと話しなよ。俺たちは家族だよ？」
家族、という言葉を聞いて僕は泣きそうになった。目の奥がぎゅっと熱くなったのがどうも堪えられない。涙の粒が落ちてしまわないよう力を入れた。
「心配かけて、ごめん」
「おう」
リュウジはゲームに戻ってしまった。ゲーム音だけが室内に響く。家族を心配させるのは嫌だ。その気持ちだけがいっぱいだった。
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
