#12 どこから。どこへ。 ページ12
二人で並んで廊下を歩く。僕たちが一緒に歩いていて玲名はいい顔しないだろうなとぼんやり思った。その間Aくんは次の授業の内容を僕に尋ねてきた。
ふとAくんの手荷物を見た。同じ理科の教科書だった。
「Aくん教科書は前の学校と同じだったんだね」
「あ、そうそう。英語以外は教科書が同じだったから助かったよ。ただ単元はこっちのほうがちょっと先に進んでるけどな」
あはは、と笑い合った。特に思い立ったわけではないが教科書の名前が書いてある欄を横目に見た。
名前が、読めない。
「Aくん、名前のところ。何で黒く塗りつぶしてるの？」
「えっ」
「AA」と書かれているはずの部分が黒ペンで塗りつぶされて読めなかった。その塗りつぶされた部分の横にちゃんと「AA」と書き直されている。それはあまりにも不自然だった。
「あーこの教科書、実はお下がりなんだ。前の持ち主の名前を消して自分の名前を書いたんだよ」
「あぁ、なるほど」
そうこう話しているうちに理科室に着いた。Aくんは「どこに座ればいい？」と聞いてきたので「教室の席と同じだよ」と教えて玲名がいる方の机を指差した。彼は笑って「ありがとう」と言った。
玲名は僕とAくんが並んで入ってきたのを見て、一瞬睨んだように見えたがすぐにまた目をそらされてしまった。
──『人は見かけだらけなんだぞ、ヒロト』
風介の言葉が頭をよぎった。
＊＊＊
「じゃあそれぞれ班で実験してプリントに結果を書いてください。考察と結果もきちんとまとめて、授業が終わった後に回収します」
ざわざわと騒がしくなりそれぞれ作業に入る。僕は記録係になったため、せかせかと言われた数値を書き出していく。本来なら一緒の班だったはずの菊池くんがいない。
ある程度実験が済むと班員それぞれまとめのプリントを書き始めた。その時、ふと同じ班のクラスメイトたちが呟いた。
「菊池どこに行ったんだろうな」
「俺あいつと同じ学区だから一緒に帰ったけど、特に変わりは無かったしなぁ」
誰も彼の行方を知らない。状況的にもまるで神隠しにあったかのようだった。そんなことあるわけないと思いつつも、今回のあまりに不思議な出来事に「あり得ない」と否定することもできなかった。
(彼はどこに行った？)
……ふと僕は手を止める。いや、止まった。僕の意思を無視して手が勝手に止まった。体が全身硬直し、動くことができなくなってしまった。
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沙夜（改）(プロフ) - 葉兎野鳥さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！まさにその通りだと思います…終わらないでしょうね〜ヒロトが完全に連鎖を断ち切ったわけではないので…あくまでこの場での収束かなと。また機会があれば読んで頂けると幸いです。 (2018年10月8日 20時) (
レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - またこういう作品を作ってほしいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - とても考えさせられる作品でした。完全なハッピーエンドで終わらないのも、その先を見たいのに見れないっていう虚しさを残らせました。ひとりかくれんぼは終わらない、そんな気がしてなりません。また他の誰かが同じことを繰り返してしまうかもしれませんね。 (2018年9月27日 1時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜（改）(プロフ) - 枢さん、ご閲覧ありがとうござます！読んで貰えてこちらこそ嬉しいです…ありがとうございます！これからものんびりやっていきます、よろしくお願いします〜！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 2f6e543b6c (このIDを非表示/違反報告)
枢 - 長いことこちらのサイトからは離れていたのですが、偶然立ち寄った際にこうして再び沙夜さんの作品を拝見できて嬉しく思います。今後も御自分のお好きなものをお好きなように創作して下さると幸いです。これからも応援しております。長文失礼致しました。 (2018年5月4日 0時) (レス) id: 714c8b0c42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙夜 | 作成日時：2018年2月11日 18時
