stand by me.

Chapter１０ ページ10

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「ねぇ、その不倫してる例のエリートとは、何処で知り合ったの」


「物凄い唐突に聞いてくるね」







畑が休みの火曜日。いつもの喫茶店でいつもの如くAとお茶をしに来た。

大学を卒業して、Aは東京には帰らず静岡駅付近の会社に就職。アホだけど頭は良くて、バリバリのOLとして働いているそう。今思えば、何故東京に戻らなかったのか。そう言う事、だったのだろう。

通常であれば今日は平日なので仕事のはず。でもこうしてたまに、火曜日にわざわざ有休を取ってくれて会う事が多かった。「だってこれが私の息抜きだからね」と、何処か嬉しそうに話していたのが懐かしい。俺との時間が息抜きと思ってくれる、それだけで俺は、嬉しかった。



そんな今日。あの日の続きを、しなければ、と思い。だって、俺はまだまだ、お前の事を知っているようで知らない。

本当は正直悔しいし泣きたいし辛くてたまんない。でも、少しでもお前の事を知れるのなら。もっと、知る事が出来るのなら。


自分の感情を押し殺してでも、お前の事が、知りたくてたまらないよ。







「....たな、怒らない？」


「うん、怒らない」


「........大学4年になる前、かなぁ。友達と呑み行って、その時にたまたま相席する事になって、一緒に呑んで。...それで、そのまま.....流れで........」


「.....は？」


「怒ってんじゃん。怒ってんじゃん、たな」







もう、いい大人だ。

いい大人なのだから、別にそこは何とも思わない。


だから、怒ってんじゃないよ。ただ、俺は。俺は、お前の事ずっと、好きだったよ。好きだったのに、この関係を崩す事が怖くて、結局、今に至る。

なのに、そのエリートは、最も簡単に、Aとの関係を持った。

それが、悔しくて。


悔しくて、たまらなかった。







「私もさー、馬鹿だと思ったよほんと。でも、何だろうね、優しい人、でさぁ。...何度か会う内に、その人が居なきゃ、駄目になってた」







前髪を掻き上げながら、目を伏せるA。


自業自得だ。聞いた自分が悪い。

でもこんなに。25にもなって、こんなにも。



心臓が締め付けられる、なんて、ね。







「...Aはそれでいいの。届くか、分からないんでしょ」


「届かないよ。最初から、分かってる。だって、奥さんの事も、お子さんの事も、とても大切に想ってるから」









あぁ、なら何で。

何で、その道を選ぶのだろう。




こんなにも、心が、苦しい、よ。



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