#93 ページ50
「オムライスだよ」
「へえ、いいね」
定番といえば定番だけど、オムライスなんて久しく食べてないな。
それに、久しぶりのオムライスがAの手作りなんて。
いっそう期待に胸が膨らむ。
「ただ眺めてるだけっていうのも何だし、僕も少し手伝うよ」
「本当に？じゃあ…」
Aに指示される通り、僕は具材を用意して調理に取り掛かる。
キッチンにこうしてふたり並んで料理をすることになるなんて、なんだか不思議なような、少しむず痒いような気分だ。
隣でAがボウルに卵を割り、パックから直接牛乳を注ごうとしている。
「待って。量は計らなくていいの」
するとAは不思議そうな顔をした。
「大体おおさじ一杯だし、感覚で大丈夫だよ」
「駄目。料理は科学って言うでしょ。計量スプーン持ってきて」
僕はAからボウルと牛乳パックを奪い取る。
Aから計量スプーンを受け取ると、それと視線とが並行になるように体を屈めながら、慎重に牛乳を注いだ。
「ふふっ」
そんな僕を隣でぽかんと眺めていたAが、ふいに笑い声を漏らす。
「何。こっちは真剣なんだけど」
「だって、そんなふうに料理する人、初めて見たよ」
肩を震わせながら小さく笑うA。
これ、そんなに可笑しいかな。
小さく咳払いをして、じろりとAに視線を向ける。
「別に…正確に越したことはないでしょ。何事も、まずは正確さに従って行うことが大事。あれこれ手を加えたり手を抜いたりするのは、それが出来てからだよ」
「ふふ、そうだね。ありがとう」
Aは悪びれた様子もなく、相変わらず可笑しそうに笑っている。
僕は至って真面目なのに。なんだか少し不満だ。
…まあ、別に悪気はなさそうだし、仕方ないから今回ばかりは不問に付してやる。
「こっちの具材はまだ切ってないんだね？私が切るよ」
そう言ってAが具材をまな板の上に乗せる。
が…
「あのさ、包丁の使い方、もうちょっとマシにならない？」
「え？」
包丁を持っていない方の手は指先を丸めないまま。
包丁の動かし方も、うまく包丁に力が乗っていなくて危なっかしい。
「添えてる方の手はこう。あと包丁は、上から押し付けるように切ろうとしないで。前後にスライドさせるようにしないと、うまく切れないよ」
「こ、こうかな」
僕の言葉に倣ってもぞもぞと手の動かし方を変えるが、まるでなってない。
「本当に料理の勉強中なの？」
「一応…」
続く (更新停止中)
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みにょん - ドキドキしっぱなしで一気に読んでしまいました。すごく読みやすい文章で主さんの文章力に脱帽です。また気が向いたときにでも続きを書いていただけるとうれしいです(т_т) (4月9日 23時) (
レス) @page50 id: 0b8338cd33 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 最近見てみたら凄くハマって！！、続きを待っています! (12月28日 22時) (レス) id: 8c0883e968 (このIDを非表示/違反報告)
きを - 愛してます。一生更新待ってます。 (12月11日 8時) (レス) @page50 id: afeed903d8 (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ(プロフ) - 最近ディズニーのハモカラみてベイマ再熱してこの作品という神作品に出会えました、、、なにとぞ、更新をいつまでも待っています、、、、 (9月27日 23時) (レス) @page50 id: ebcad6c5f5 (このIDを非表示/違反報告)
ame(プロフ) - 更新を…待っています…なにとぞ… (8月16日 13時) (レス) id: 7d07391b49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たーた | 作成日時：2015年2月9日 23時
