#70 ページ24
「ちょっと…怖い、かも」
私が落ち着かない様子でいる理由を何とも容易く勘違いしてくれたヒロに、私は小さな声でそう返した。
「はは、大丈夫だって。じきに慣れるよ」
ヒロは私の背中を軽く叩き、楽しそうに笑いながら、ごく自然な動きでその腕を私の肩にまわした。
私が今一体どんな気持ちでいるかも知らないで、そんなことを飄々とやってのけるヒロが憎たらしくて仕方なかった。
その行動に対するためらいの無さは、私達の関係があくまでも"昔馴染みの気の置けない友人"という位置付けにあることを、嫌でも私に思い知らせているようだった。
頭の中がクールダウンしていくのと同時に、強張っていた肩の力も徐々に抜けていった。
そんな私を見て安心したように目を細めると、ヒロはもう一度窓の外に目を向けた。
「それにしても、ベストタイミングだよね。ほんと綺麗。
A、分かっててこの時間にしたんでしょ」
「そうだよ。
せっかくだもん、一緒に眺めたいと思ったの」
私から顔を逸らして窓の方に目を向けているヒロの表情は全く伺えない。
「…ねえ、A」
「うん？」
「次、どこ行く？」
「え？えっと…まだ乗ってないのって何だっけ」
私の返答に、ヒロは少し不満げな声で言った。
「あーもう、そうじゃなくて。
今日が終わったら、またいつかふたりで出掛けないかって誘ってるんだけど」
「え…う、うん…？」
突然の提案に驚き、つい中途半端な反応をしてしまった。
そんな私の反応が気にかかったのか、ヒロの態度は一転、少し決まりの悪そうな表情をこちらに向けた。
「…あー、えっと…。ごめん、変なこと言って。
今日が思ってた以上に楽しかったから…またどうかな、と思って」
照れくさそうに視線を逸らしながら言い訳を始めるヒロを見て、私は慌てて訂正を加えた。
「ううん、違うの。変とかじゃなくて…
私もそう思う」
そんな私の言葉に、ヒロは驚いたように目を見開いた。
自分から言い出したくせに。
「嬉しい」
本当に心の底から嬉しくて、私はヒロにその気持ちを正直に伝えずにはいられなかった。
ぽつりと呟いたその声は、この小さな空間に漂う沈黙の中に、静かに溶けていった。
私の目を見つめたまま、ヒロは何も言わない。
耐えられなくなった私は、その視線から逃れるように俯いた。
それでもなお強く感じるヒロの視線に、私は少し遠慮がちに、そして静かに自らの視線を交えた。
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みにょん - ドキドキしっぱなしで一気に読んでしまいました。すごく読みやすい文章で主さんの文章力に脱帽です。また気が向いたときにでも続きを書いていただけるとうれしいです(т_т) (4月9日 23時) (
レス) @page50 id: 0b8338cd33 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 最近見てみたら凄くハマって！！、続きを待っています! (12月28日 22時) (レス) id: 8c0883e968 (このIDを非表示/違反報告)
きを - 愛してます。一生更新待ってます。 (12月11日 8時) (レス) @page50 id: afeed903d8 (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ(プロフ) - 最近ディズニーのハモカラみてベイマ再熱してこの作品という神作品に出会えました、、、なにとぞ、更新をいつまでも待っています、、、、 (9月27日 23時) (レス) @page50 id: ebcad6c5f5 (このIDを非表示/違反報告)
ame(プロフ) - 更新を…待っています…なにとぞ… (8月16日 13時) (レス) id: 7d07391b49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たーた | 作成日時：2015年2月9日 23時
