あの日出逢っていなければ②【鬼滅の刃】【冨岡義勇】 (ページ35)

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祝言② ページ35

ユカと初めて会ったのは、
俺の警備地区である山の中だった

確かあの日は、月が出ていて
とても明るかった記憶がある

鬼に遭遇していたユカを助け
麓まで背負って降りた

あの時の事は鮮明に覚えている

灯りに照らされたユカは
恐怖を表に出さぬよう強がってはいたが
顔は真っ青になっていた

それでも、彼女は美しかった

思えばあの瞬間から、俺の心の中にはずっとユカがいた

いつも俺の隣で笑ってくれる
あの柔らかい笑顔が堪らなく好きだ

時には自我を通す気が強い所もあるが
その頑固さまでもが俺には羨ましく感じる

ユカは俺にはない物を沢山持っている

控え目だが、ちゃんと芯が通っていて
何より俺の事を常に想ってくれている

ユカはいつも俺の左側を半歩下がって歩く
その姿がとても愛らしい

その隣にいるのは生涯、俺だけで良い

＊

風に靡いている庭の藤の花を眺める

鬼避けの為としか考たことは無かったが
ユカがこの前花言葉を教えてくれた事を思い出した

『義勇さん、藤の花には、
“決して離れない“という花言葉があるんですよ』

「決して離れない…か」

「ん？何か言ったか？」

「いや、何でもない」

「準備出来たって、言ってくるよ」

鏡に映る自分の姿は、何とも言い難い違和感がある

着物ですら普段着ることの少ない俺が
羽織袴を着る日が来るとは思ってもいなかった

ユカ、俺は
お前と並ぶに相応しい男性になれているだろうか

俺は椅子から立ち上がり
一つ深呼吸をした

「義勇さん、ユカです」

襖の向こうからユカの声がした
心なしか、声が震えている様だ
ユカの緊張した顔が目に浮かぶ