祝言�� ページ34
義勇さんと初めて出逢ったのは
朧月が綺麗な、桜が咲く春の夜だった
あの夜、鬼と遭遇し、殺されそうだった所を
義勇さんが救ってくれた
初めて会う人間とは違ったそれと
初めて見る美しい水の剣技と
初めて感じた焦がれた想いと
様々な感情が入り混じったあの日から、
今日の日を迎えるまで色んなことがあった
何の変哲もなかった日常がガラリと変わって
私の知らなかった世界へ
連れて行ってくれたのは義勇さんだった
貴方といる毎日がどんなにか幸せか、
義勇さんは知らないでしょう？
左斜め後ろから見上げる義勇さんの横顔は
きっと私しか知らない
今までも、そして、これから先もずっと。
貴方の左側を歩くのは
いつだって私で在りたい
＊
部屋から見える藤の花がそよそよと風に揺れている
ちょうど藤の花が満開になる今
出逢いから一年
遂にこの日を迎えた
「本当に綺麗よ
我が娘ながら、ため息が出ちゃうくらい」
「やめてよお母さん、大袈裟」
「そんなことないわよ、きっとお父さんもう泣いてるんじゃないかしら」
「ええ、早くない？まだ始まってないのに…」
そう言うお母さんも、少し涙ぐんでいる
やめて欲しい…私まで貰い泣きしてしまうではないか
せっかくのお化粧が落ちてしまうのは嫌だから
ぐっと涙を堪えて、目の前の鏡を見つめる
鏡の中に映る私は
貴方に相応しい女性になっているでしょうか
緊張し過ぎて、自分の心臓の音が煩い
「紅、濃すぎない？」
「ユカの白い肌にとても映えてて綺麗よ、大丈夫」
「き、緊張してお腹痛くなってきた…」
「さぁ、ユカ、冨岡さんも用意ができたみたいよ
しっかりね」
「えっ！あ、はい！」
広間で待ってるわ、と母が部屋を出て行く
祝言がいよいよ始まろうとしていた
広間からは既に皆の話し声が聞こえる
ド派手な声を出しているのはきっと宇髄さんだろう
結局、柱の皆さんや炭治郎くん達も来てくれたのだ
夜はまた任務だというのに
貴重な時間を割いて私達の為に
本当に、感謝しかない
私は、ふぅ、と一息つくと
着慣れない着物を纏いながら
義勇さんの待つ部屋まで向かう
「義勇さん、ユカです」
「入ってくれ」
いつもの義勇さんの声に少し安心して
襖に手をかけたー
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作者名：碧 | 作成日時：2021年5月4日 1時
