鬱々�� ページ29
〈続き〉
「ユカ、帰った」
勢い良く戸を開け声を掛けるが、
ユカからの返事は無い
俺はそのまま外から庭の方へ向かった
ちょうど、洗濯物を持って縁側へ出てきていたユカの姿を見つけ、安堵の溜息をつく
「あっ義勇さん、お帰りなさい！」
「ああ…ただいま」
俺に向けられる柔らかい笑顔に
サラサラと揺れる綺麗な髪の毛
確かにユカは此処にいる
しかし俺には今
お前の心が分からない
「お薬、無事にいただけましたか？」
「ああ」
「それは良かったです。
そうだ義勇さん、今日は伊黒さんが来られるんですよね？
伊黒さんの日輪刀はまだ見た事がないので、
楽しみです！」
洗濯物を干しながら、
ユカは楽しそうに話していた
一体何がそんなに嬉しい
「…そんなもの、いい」
「え、何ですか？聞こえな…」
「だからそんなもの楽しみにするなと言っている！」
「ぎ、義勇さん…？どうなさったのですか？」
苛立ちを感じると共に
突然、俺の中で何かが弾けた
ユカに近づきそのか細い両肩を掴むと
少し恐怖の表情を浮かべていた
「ユカ、お前は何を考えている
鬼殺隊にでもなるつもりか？」
ユカはその言葉にピクリと反応し
一瞬目を泳がせたが
改めて俺の目を見つめて言った
「私は…、鬼殺隊の方々が、羨ましいです
私なりに、考えました
鬼殺隊になりたい…なれるかどうか
下級隊士の方々でさえ
血の滲むような努力をしてきた事を聞きました」
「待て、何故突然そんな事を思った」
「それは、決まってるじゃ無いですか…
私も義勇さんを守りたいからです」
ーああ、そう言うことか
鬼殺隊員や柱と接し、刀を交える俺の姿を毎日間近で見て
お前の中にそう言う思いが生まれたのか
私も鬼殺隊員だったらー
義勇さんと共に戦い、守りたいー
その思いは消えることなく、
寧ろ、増す一方だったのだろう
「ユカ…、そんな事…思わなくて良い」
「私には料理しか取り柄がないんです、
そんなもの何も役に立ちません」
「ユカ、俺の話を聞け」
「義勇さんの、側にいるだけでは駄目なんです…
私も義勇さんのお役に立ちた」
「ユカ！」
ユカは一瞬ハッとすると、そのまま俯いた
俺は、ユカをここまで追い詰めてしまった事への罪悪感や
彼女の気持ちに気付かなかった事への自分への怒りを感じながら、ユカをきつく抱き締めた
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作者名：碧 | 作成日時：2021年5月4日 1時
