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田村海琉くんと出会ったのは、小学生の時。
普通の家庭に生まれた私は、どっちかというと田舎娘みたいなタイプで、木登りや追いかけっこを近所の子どもたちとして大騒ぎしながら毎日を過ごしていた。
品の欠片もない、かけ離れた存在だったのを変えたのは、彼との出会いだった。
『......カブトムシ取ったぁぁぁ!!』
『すごい、A!かっこいい!』
近所の男の子たちと一緒に虫取りをしていたら、登った木の先に見えたのは高そうな制服を着た男の子だった。迷子になったらしく、辺りをきょろきょろしていたので、私は気になって声を掛けに行った。
『どうしたの?!迷子?!』
『......っ!は、はい...』
『どこ?!案内したげる!』
スっと手を差し出したけど、その子は怯えているのか肩を震わせていた。どうしたのかと思ったけど、当時の私は手が汚れていた。育ちの良いこの子にとっては、それが嫌悪に感じたんだろう。だから、すぐに手を引っ込めて歩き出す。
『とりあえず交番に行けば、大丈夫!心配しないで!』
『......、』
『え?』
『お、大きな、噴水...ボクの家の、目印』
『大きな噴水?!知ってる!こっち!』
そう言って手招きしたら、今度は隣に並んで歩いてくれた。それが、田村海琉くんだったのだ。
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作者名:時雨 | 作成日時:2022年11月19日 10時