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「本当に大丈夫?......手、赤くなってるね」
『あっ、だ、大丈夫です...それより、海琉くん、どうしたんですか?』
「あの、レッスン日のプリントをもらったんですけど、Aさん忘れていたみたいだったので」
そう言って、海琉くんは持っていたプリントを1枚私に渡してくれた。そうか、これを届けようとしてくれたんだ...優しいな、と思っていたら、掴まれていた手首が赤くなってるのを心配してくれる。本当に、こんなに素敵な人に私があのカブトムシをあげた女の子だなんて知られたら、幻滅されてしまう。
『ありがとうございます。助かりました』
「いえ。それで......織山先輩とは、お知り合いですか?」
『えっ?!い、いえ!初めましてです...!なんか、昔の知り合いに似てたらしくって、それで』
「そうですか...もし、なにか困ったら教えてくださいね。僕で良ければ、力になりますから」
会話が聞かれてなかったか心配だったけど、どうやら大丈夫だったみたい。
ここで知られてしまったら、それこそ水の泡になってしまう。
せっかく、隣に立てるところまで来たんだから、この立場はなんとしてでも死守しなくては...!
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作者名:時雨 | 作成日時:2022年11月19日 10時