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「あっ...お金、いくらですか？」
「要らない。」
「え、でも...」
「それ、冷めないうちのが美味いから」
「......すみません、ありがとうございます」
そう言うとやぶ先輩は俺の隣の椅子にどかっと座り、紙袋からハンバーガーとコーヒーを取り出した。
俺も一旦仕事の手を止めて紙袋からハンバーガーとカフェオレを取り出す。1口飲んだらカフェオレの甘さが口の中に広がり、途端に空腹を感じた。
そのままハンバーガーに控えめにかぶりついてみると、びっくりするほど美味しくて。
「......美味しいっ！」
「だろ？あいつのこれは、俺のオススメだから｣
「えっ...そ、そうなんですか？」
「......なにそんなに驚いてんの」
俺のリアクションに、反応してくれたのが嬉しくて、だけど動揺してしまったのが隠せなかったらしく、やぶ先輩からは冷たい視線を送られた。
違うの、変な意味じゃない。
だけど上手い言葉は見つからなくて、拙い言葉で、弱々しく答えた。
「せ、先輩が...俺なんかに、オススメ教えてくれたのが、嬉しくて、つい」
「......八乙女さ、」
「はい？......っ?!」
「自分のこと、否定的に見すぎ。その...お前が、一生懸命なのは、分かってるから」
急に伸びてきた手が、俺の髪に触れた。
先輩が、目を見て言ってくれなくて良かった。
だって今の顔、絶対絶対見せらんないもん。
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作者名：時雨
| 作成日時：2020年4月9日 19時
