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「いくつかパーティーの間に人が寄らない場所はあるんだけどさ、ここが1番静かかなって思って」
「......随分詳しいですけど、来たことあるんですか?」
ぺらぺらと喋る伊野尾先輩の言葉に、思った言葉をそのまま言葉にしてみた。
前にやぶ先輩から聞いた伊野尾先輩は、ただの同級生みたいな、そんな印象だということを覚えていたから。
それなのに、やぶ先輩の話をする伊野尾先輩はまるで仲良しの幼馴染みの話をしているかのようにしか聞こえてこなかったから。
「あー......まぁ、小さい頃は家族ぐるみで仲良かったからね。よくパーティー抜け出していろんな部屋回ってたなぁ」
「薮先輩から、あんまり仲良くないみたいに聞いてるんですけど......」
「あぁ。俺の家が倒産する前の話だからねぇ。」
「えっ...?」
サラリと伊野尾先輩の口から出た言葉は、私には到底サラリと流せる言葉ではなかった。
だって。だったらなんで普通科じゃなくて居られるの?
「この際だから、言っちゃうけど。俺の父さんの会社、1回倒産してんの。今は違う仕事して生活には困ってないけどさ、それからはお互い気まずくてもうパッタリよ」
「そう......なん、ですか」
「うん。まぁ今も一応小さくても会社社長だし、ここの学費くらいはなんとかなるからって通わせてもらってるよ。ちゃんといいとこ出て勉強して、恩返ししないとだからねぇ」
「......偉い、ですね」
「適当だとか思ってたっしょ?意外とちゃんと考えてんだよ。将来のこととか、家族のこと。あと、」
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ふと、視線が絡んだ。
この前のことが、頭の中で鮮明に蘇る。
月明かりに照らされた、桜の木の下。
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翠恋(プロフ) - おかもとケイとるさん» ありがとうございます!がんばります!!! (2018年4月14日 20時) (レス) id: 232e0efe2c (このIDを非表示/違反報告)
おかもとケイとる(プロフ) - 更新楽しみにしてます (2018年4月14日 18時) (レス) id: 1490ed1241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翠恋 | 作成日時:2017年12月9日 22時