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圭人「翼を、奪う…!?」


裕翔「そう。翼を掴んで引き抜くだけ」


圭人「そ、そんなことしたら、」


裕翔「ヤマが死ぬって?

大丈夫だよ、薮くんは死んでないだろ?」


圭人「えっ…?」


裕翔「そっか、圭人は知らないか。

薮くんは昔、優秀な翼の持ち主だったんだよ。
ヤマが翼を覚醒させた時、力が大きかったんだろうね、ひどく暴走してさ。薮くんはそれを止めた。自分の翼を犠牲にして」


ふと、初めてカラスと遭遇した日を思い出した。ガラス越しに空を見上げて話す薮ちゃんは、翼に関してやけに詳しかった。
そういえば、山ちゃんがいのちゃんの暴走を止めようとした時も…。


裕翔「だからさ、ヤマの翼でいのちゃんを助けようよ、な?」


圭人「…でも、」
裕翔「やれよ。」


真っ直ぐ俺を見つめる裕翔の瞳は、いよいよ澱んだ色に染まり、俺は思わず視線を落とす。

裕翔「逃げるな!」

突如後ろに回った手が俺の首筋をとらえた。脳裏に裕翔の深い瞳が焼き付いていく。

圭人「……!」

裕翔「お前のせいでいのちゃんが死ぬ。目を逸らしたって事実はついてくるぜ?いつまでも、どこまでも!

その重みに、耐えられるのか?」






何も、言い返せなかった。動けなかった。
また、一筋の涙が流れるのを頬に感じた。

やっぱり、俺が、あの場にいなければ。
…もし翼を持っていたら、きっと、きっと大ちゃんは落ちなかった、いのちゃんだって…

ごめん。俺のせいだ。間抜けな、愚かな、弱い俺のせいで。

皆、皆傷ついて。俺が強ければきっと、こんな事には。ごめん。











裕翔から染みだした黒が、手を伝って首筋に染み渡っていく。視界が揺れる。








…そうだ。

強くならなきゃ。俺にはいのちゃんを救う義務がある。

山ちゃんの翼を奪いさえすればいい。

そうすればいのちゃんは助かるんだ。



圭人「俺が…


俺が、いのちゃんを救う…どんな手を使ってでも!」


黒が、身体中をなだれた。少しずつ、酸素が奪われていく感覚を伴った。わずかに微笑む裕翔が、だんだん遠くなって、

圭人「かは……っ!」

突然だった。背中がひび割れる痛みに意識が引き戻される。







それは俺の背中を押し破った。

後産の痛みに痺れながら、ゆっくりと後ろを見遣る。



初めて得たそれは、俺をどこまでも強くしてくれる気がした。

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ユキ(プロフ) - ききさん» 前回に引き続き、ありがとうございます!励みになります(^-^)/ (2018年1月28日 18時) (レス) id: a8713bcbc6 (このIDを非表示/違反報告)
きき - 移行おめでとうございます!憑いてる!?シリーズからずっっっっとユキさんの作品を読んでますが相変わらず面白いですね(*^▽^*)これからも楽しみですヽ(*´∀`) (2018年1月26日 21時) (レス) id: b5dd81d92a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ | 作成日時:2018年1月23日 0時

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