interlude ページ28
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大貴side
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「…、……、」
静寂だった世界を、わずかに、揺らす音。
脳の中身が、ジンジン、揺れる。
掌に、微かに感じる、温もり。
「大ちゃん、」
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どこか遠くで、誰かが、俺の名前を、呼んでる…?
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「…起きて、大貴!!」
懐かしいその声に、俺の意識は深い眠りから一気に引き戻された。
眉間にシワを寄せて、うっすら目を開けてみる。
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ぼやけた視界に、見覚えのない男が映る。
大貴「ん…お前………誰?」
だがそいつは、俺の言葉を全く無視した。表情ひとつ変えずにズイ、と顔を近付けてきたかと思えば、
コツン!
大貴「いてっ!」
音の割に大して痛くはなかったけど、反射的に声が出た。
せっかく人が気持ちよく寝てたのに、
大貴「いきなり何すんだよ…」
おでこをさすりながら、頭突きをかましてきたそいつの顔をもう一度、まじまじと睨み付けようとした。
が、眠りの邪魔をされた怒りは、目が合った瞬間、どこかへ吹っ飛んでしまった。
そいつに関する記憶が、吹っ飛んだ怒りの代わりに飛び込んできて、俺はガバッと身を起こした。
大貴「知念!」
侑李「やっと目が覚めた?」
久しぶりに会えた感覚に、頬の内側が温かくなる。鼻の奥がツンとした。
大貴「心配したんだぞ!」
侑李「よく言うよ、僕のこと忘れてたくせに」
大貴「うっ……」
読まれてる。つい、手の甲を鼻の下に持ってくる癖が出る。チラッと知念を見上げると、おでこがほんのり赤い。
涼介「相変わらず寝覚め悪ぃな」
声に振り返る。山田はもうすでに起きてたらしい。裕翔も、薮ちゃんも。どうやら、眠る俺を覗き込んでたみたいだ。
でも懐かしさは感じない。深い眠りに落ちる前、俺は確かに皆と一緒にいた。
…こことは違う世界で。
どうして俺は、知念のことだけ忘れてたんだろう。
そんな疑問は、隙間からチラリと見えた光景に、即座に頭の隅へ押し込められてしまった。
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天井を仰いだまま、横たわる高木の横顔。
そこに、はっきり刻まれた黒い模様。
顔だけじゃない。首筋にも、手にも脚にも。身体中を這うように覆ったそれに、息を吸うのも忘れてしまった。
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ユキ(プロフ) - ききさん» 前回に引き続き、ありがとうございます!励みになります(^-^)/ (2018年1月28日 18時) (レス) id: a8713bcbc6 (このIDを非表示/違反報告)
きき - 移行おめでとうございます!憑いてる!?シリーズからずっっっっとユキさんの作品を読んでますが相変わらず面白いですね(*^▽^*)これからも楽しみですヽ(*´∀`) (2018年1月26日 21時) (レス) id: b5dd81d92a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ | 作成日時:2018年1月23日 0時