学園のわけありアイドルたちの日常 (ページ14)

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どれほど経ったのかわからないが一冊を読み終える頃、奥の方で物音がした。

本に夢中で全然気付いてなかったけど、もしかして最初から誰かいたのかな…。

はしゃいじゃってたの、聞かれてた…？

奥の部屋を見てみると、そこには人影が。

そろりと盗み見ると、机に伏す一人の男の子。

近くには彼のものと思われるメガネがあり、あどけなさの残る寝顔が見える。

少し見惚れていると、

「………え？」

その人の表情が少し歪んで、ぽろ…と一筋涙が零れた。

見ず知らずの人なのに、気が付いたら手を伸ばしていた。

壊れてどこかに消えていってしまいそう、そんな気がした。

名前だって声だって、何一つとしてこの人のことは知らない。

分かるのは性別と、見た目から憶測出来ることのみ。

だけど、どうしても放っておけなくて、思わず指の腹で、涙を拭った。

「……………何してるんだろ、私」

この場には他に誰もいないけれど、なんとなく禁忌を犯した気になった。

ハンカチを彼の手に握らせ、早足でその場を去った。

………人の涙は自分まで苦しくなってしまうから、苦手だ。