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足にかかった布団を引っぺがして、ベッドから勢い良く降りる。階段を駆け下りて、「おはよう」と母親に声掛けしてから洗面所へ直行。お湯が出るのを待つ間もなくまだ冷たい水で顔を濡らした。タオルを探す片手間で歯を磨く。うがいをしてから顔についた水滴をタオルで拭い、すかさず保湿。スキンケアは怠るなという美意識の高い友達からの助言通り、いくら忙しくても保湿の類を欠かすことはない。
 その後はメイクを済ますためにともう一度2階に上がる。どてどてと足音を立てながら走り回ることの何たる忙しさはしたなさ。そんなことに構う暇もなくドレッサーに座る。まずは下地、ファンデ、コンシーラー、パウダーでベースを整える。アイシャドウは薄めに、アイライナーは垂れさせ、涙袋を綺麗に目立たせる。軽くビューラーをして、マスカラをつけ、眉を書く。最後に軽くチークをふんわりと。うん、可愛いんじゃない?
 ハンガーにかかった制服を手に取り、手早く着替えていく。我が学校は制服に関する規定はないので各々好きな制服だ。シャツを着てスカートを履き、ニーハイ、カーディガン、胸元にリボン。着替えられたら髪を梳かしてからヘアアイロンを160度に温め、前髪をセットしスプレーで固める。サイドはゆるく巻き、ほのかに良い香りがするヘアオイルを馴染ませる。
 ……はい、かわいい女の子、完成。
 自分で言うのもなんだが、見てくれは良い方だと思う。多分。日々朝忙しい中、しっかり身だしなみに気を遣っていてよかった。剣持くんがどういう女の子を好きなのか分からないが、整っている見た目ならば悪い印象は与えないだろう。まあ、今日からは少し気合を入れているが。
 
 スクールバッグを抱え上機嫌でダイニングに降りてきた私を見て、母親は嬉しそうに笑った。

「何かいいことがあったの?」

 そう聞いてきた母親に、朝食のトーストを一口齧って「うん、とっても」と答える。良かったね、と声をかけてくれた母に、満面の笑みを見せながら朝食を済ませた。母親お手製のお弁当を詰め、ローファーを履く。カツ、と爪先を叩いて微調整。玄関先にある姿見の前で、くるりと1回転してみれば、360度、どこから見てもそれなりに可愛いと思う。よし、今日から剣持くんに意識してもらえるよう頑張るんだ。

「行ってきます!」

朝の晴れやかな空気に、私の声が響いた。

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作者名:うぐ | 作成日時:2023年11月6日 22時

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