初夏の枇杷に溺れて、

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いつの間にか2人いたお客さんは帰って、俺たちだけになった

『今日は亮さんおひとりなんですね』

「徹也と一緒のほうがよかった？」

クス、と笑いながら俺がそう言うとAちゃんは分かりやすそうに頬を赤らめて否定する

「Aちゃんわかりやすすぎ。

顔に書いとるよ、徹也が好きって」

いつもはこんなことしないのに、アルコールのせいもあり俺はAちゃんのぷりっとした頬に触れる

『亮さん…？』

「ん。可愛い」

カウンターから少し身を乗り出して



俺はAちゃんの唇に自分の唇を重ねた



チュ、と控えめなリップ音が聞こえて離れるとAちゃんは驚いた表情で俺を見つめる

『亮さん…………』

「ごめん、今のは忘れて」

キスをした俺もなんか恥ずかしくなってハイボールを一気に飲み干した






それから本当に何も無かったかのように2人で色な話をしてそろそろ帰ることにした


「チェックで」

『はい、2800円となります』

俺は丁度出して椅子から立ち上がった

『またいらしてください、お待ちしてます』


「LINE教えてよ」

俺がそう言うと一瞬戸惑った表情を見せたAちゃんだったが、

『はい』


と言いLINEを交換した



「じゃ、また来るね!

バイバイ」

『はい、お待ちしてます』

ひらひらと手を振るAちゃんに微笑んで俺はお店を後にした









「あー……キスしちゃった」






枇杷色の彼女の唇からはほんのりアルコールとレモンが混ざった味がした

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