青の秒針【不二周助】 (ページ6)

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「不二くん！」
「遅くなってごめんね」

勝手に開けた屋上の扉。僕と彼女の秘密。開いた先には、さっき教室から見たのとは少し違う、青と白がどこまでも広がり続けている。僕は、広い屋上の片隅に、彼女の隣に腰を下ろす。なんだか僕らがとてもちっぽけなもののように感じる、いつもの瞬間。

いただきます、と礼儀正しく手を合わせる彼女を見習って僕も手を合わせる。彼女のお弁当の中には、とても美味しそうなおかずが見えた。いつも疑問に思っていたのだけど、自分で作っているのだろうか。それとも、はたまた。敢えて触れないことにするけど。美味しい！と笑顔を浮かべる彼女に微笑んで、僕も一口。うん、美味しい。

「ねえ」
「ん～？」
「手塚が死んだんだ。知ってた？」

少し顔を歪めて、箸を置いた彼女がこちらを向く。

「うん。聞いたよ。でも、触れちゃいけないものだと思ってたから」

だから、一週間も休んだんでしょ？と聞かれてうん、と頷く。テンプレでもう大丈夫、なんて聞かれてしまう前に、気持ちの整理はついたんだ、と現状を伝えた。

「それに、親友が死ぬのはもう一度経験してたから」

一度経験していたからといって、慣れた、と言うのは違うと思うけれど。前よりかは、ほんの少しだけ気持ちの整理が楽だった。人はいつか死ぬし、仕方のないことだと割りきれれば、まあ多少はね。

「同級生が死ぬのは、これで二回目だなぁ」
「えー、そうだっけ？」

どこまでも他人事な彼女も、仕方のないことだと割りきればなんとも感じない。それが僕らの今の関係。深く過去に関わらない。

だから今まで、僕もその死に触れないようにしていた。例えば、僕が一週間泣いたとしても、１ヶ月泣き続けたとしても、君が無いというのなら無かったことにしようと思っていた。

だけど、もうそれじゃ駄目だと思った。手塚が死んで、ずっと感じていた。僕が、しなくてはならないこと。

「ねえ、聞きたいことがいくつかあるんだけど、いいかな」
「ん～？」

うん、と答えればいいだけなのに、勘のいい彼女は少し考え込むような態度をとる。きっと彼女は、僕が変えたいことを見越した上で変わりたくないと思っている。

「それじゃあ、鬼ごっこ、しよっか」
「……は？」
「今から3日以内に、私を捕まえられたら勝ち。なんでも聞いていいよ。範囲はこの学校の中」

ちょっと待って、と呼び止める前によーいどん！と彼女がまるで空気に溶けるように消えてしまった。ちょうど、予鈴がなった。