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「田中樹って言います。初めまして」
俺の思い出回想はチャラ男によって現実に引き戻された。
「あ、松村北斗です」
気づけば俺は同僚の集団から少し離れて、Aと田中さんと三人で立ってる。
チャラ男なのに、Aに向ける笑顔はとても優しそうで、なんか悔しい。
Aも田中さんに幸せそうな笑顔を向けてる。婚約者だもんな。
「いつからいつまで付き合ってたんですか？」
明らかな詮索モード。
「高一の秋から高校卒業までですね」
「樹も北斗もそんな怖い顔しないの」
なんでかわからないけど田中さんが三人で一杯飲もうぜというから、一番気楽に話せる同期に帰るねと告げて歩き出す。
「Aの唯一の元彼ってどんな人なんだろうなって思ってたんすよ」
Aに向ける笑顔よりはぎこちない笑顔でこちらに笑いかけてくる。きっと優しい人ではあるんだろう。
唯一の元彼か。モテモテだったAの高校時代は俺が独占してたけど、大学時代はどうだったんだろう。
高三の卒業式で別れてから一切連絡をとってなかったから、俺はこの７年間を何も知らない。
友達、とAから一個上の幼馴染に紹介された俺は友達という立場に少し寂しさを感じていた。
高一の秋。
近くの図書館で2人でテスト勉強をするなんて、もう友達以上だと思ってたのに。
そのテストが終わった俺は、京本先輩に挨拶に行った。
告白してもいいですかって。
そしたら彼は余裕そうに俺に聞かなくていいのにと笑った。
その儀式を経て俺はAに告白した。
答えはokだった。
初めての告白。初めての彼女。俺の心はルンルンだった。
手を繋いでAの家まで一緒に帰って、クリスマスには初めてのキスをした。
そんなふうにるんるんな日々は受験期になるまで続いた。
「私北斗と同じ大学目指すから」
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作者名：yurima | 作成日時：2023年10月25日 18時
