お姉さん飼いはじめました (ページ3)

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一人暮らしのアパートに着くと俺の部屋のとなりのドアの前でしゃがみ込む女の人。
物は散乱しているし、子どもみたいに泣いている、どう見てもやばい。
でもその人の後ろを通らないと部屋には行けないし、意を決して声を掛けた。

｢あの、大丈夫ですか？｣

俺に目線を向ける、

｢かわいい、」

思わず漏れた言葉
やばい人だと思ったのに、そこにいたのはうさぎのように目を赤くして、きょとんと俺を見上げる、かわいいお姉さんだった。

｢え？」

｢あ、お姉さん大丈夫ですか！？なんか、どこか痛いとか！」

｢、鍵が、家の鍵がなくて、」

そう口にして、またぽろっと涙が溢れた。

｢え、鍵？」

そんなこと？、そう言いかけた言葉を飲み込んで一緒に散らばった荷物を覗き込む。
ぱっと見て鍵らしきものはない。

｢お姉さん、ちょっと落ち着こ？あるから、ね？」

子どもをあやすように頭を撫でれば、上目遣いで俺を見つめる。

｢荷物まとめて、もう一回、ゆっくり探そ」

｢うん、」

散らばる荷物を一緒に鞄に入れる。

｢俺の部屋となりなの、ここ寒いしおいでよ」

握った手は冷えて悴んでいた。
爪は紫になってしまっている。
その手にはあと息を吹きかけてさすってあげれば、うんと小さく頷いたお姉さん。

｢よし決まり」

手を引いて立ち上がらせる。
俺の部屋のドアを開けて、どうぞ、としてもお姉さんは動かない。

｢あ、俺変なことしないから！！ほら！高校生だし！！ね！？」

｢あ、ちがうの、鍵あった」

スカートのポケットから出されたキーホルダーのついた鍵。

｢あ、ほんとだ！よかったねお姉さん」

｢ごめんなさい、迷惑かけて」

｢全然大丈夫！！」

｢わたしほんと、だめで、」

冷静になったお姉さんは恥ずかしそうに笑って、俯いた。手のひらはぎゅっと握られている。

｢お姉さん、泣いていいよ？」

｢え、」

｢泣きたいって顔してる」

握られた手を開けば痛々しい爪の跡。

｢あんなに泣いたんだから、もう一回俺の前で泣いたって変わらないよ」

｢っ、」

ぽろぽろと涙が溢れる。

｢お姉さん、俺が守ってあげる」

ぎゅっと小さな身体を抱きしめた。

これが、俺とAちゃんの出会い。