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お馴染みの青果屋さんで、紙袋いっぱいの野菜を買うと、おまけに果物まで付けてくれた。ビニール袋じゃなくて、紙袋に入れてもらえることが、世間では不便かもしれないけれど、私にはなんだか嬉しいことだった。茶色の紙袋を両手で抱えるのは、なんだか得した気分だった。じゃがいもが零れてしまいそうだ。
袋を抱えたまま、喫茶店に入る。小さな場所には落ち着いた音楽が流れていて、私の絵が飾ってある。こんなすてきな場所に飾られている絵は、私の小さな自慢でもあった。
｢葵ちゃん、いらっしゃい｣
キナリのエプロンを付けて、ロングの髪をお団子に束ねているマスターが、変わらずの笑顔で迎えてくれた。お母さんのような雰囲気で、暖かく迎えてくれるこの人とは、もう数年の付き合いになる。マスターのケーキが食べたくて、と声をかけると、嬉しそうに笑って、ショコラが焼けていることを教えてくれた。
カフェオレとショコラ。カウンターに座り、至福のときを過ごす。
隣のとなりのとなりに、若い男のひとが座っていた。チェーン店でもないのにひとりでなんて珍しいな、と思いつつ、紙袋を隣の席に置く。どうやらマスターとは親しいようで、楽しそうに話をしていた。聞いてはいけないと思いつつ、聞こえてしまう会話。どうやら野球のはなしをしているらしい。私には分からない世界だ。
この街には、大人気の野球チームがある。今のアトリエを拠点にした頃、駅にユニフォーム姿のひとがたくさんいて驚いたことがある。どうやら近くに球場があるらしい。とても活気に溢れていて、思わず人々の表情を絵にしてしまったくらいだ。
マスターとカウンター越しに話す男のひと。ふと視線を向けると、とてもきれいな横顔だった。高い鼻筋と切れ長の瞳、そのまま切り取って描きたい被写体だと思った。
ぼーっと見つめていると、その彼の瞳が私を写す。驚いて思わず逸らしてしまうと、マスターが小さく笑った。
｢絵にしたいなあ、って思ったでしょ｣
そう、にこにこと言われてしまう。図星をつかれ黙ってしまうと、男の人から疑問の声が聞こえた。それはそうだ、突然見つめられて、絵にしたいなんて、普通なら驚いてしまうだろう。
｢そこに飾ってある絵は、この子が描いたのよ。この間上林くん、褒めてたじゃない？｣
切れ長の瞳が、今度は真っ直ぐ私を捉えた。
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aoi(プロフ) - みゆうさん» こちらこそです＊楽しみにしています。 (2019年3月5日 1時) (
レス) id: 1e8b3648c1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさん» 見てきただけて嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年3月4日 22時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みゆうさん» とてもありがたいお言葉ありがとうございます…！意識している部分でもあったので、嬉しいです＊そして実は私、みゆうさんのおはなし拝見させてもらってます。私こそ更新楽しみにしています＊ (2019年3月1日 0時) (レス) id: ddb827d49e (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさんの書く小説、主人公の見ている景色や生活の雰囲気だったり、想像力が膨らんで、心がほっこりする言葉の使い方が凄く好きです。更新楽しみにしています！ (2019年3月1日 0時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aoi | 作成日時：2019年2月28日 23時
