約束は小指から。【諸伏景光】

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　桃色に散りばめられた桜のカーペットと、べったりと青色の絵の具で塗りたくったような蒼穹。春の訪れを感じさせる温かい気候。


　まさに入学式に打って付けの今日。真新しい学ランを着て、彼女の家へ訪れた。



「おはよう、Aちゃん。」


「おはよう！ヒロくん。」


　玄関の扉の先には、僕を恋慕の情で悩ませる女の子が姿を見せた。

　僕に挨拶してくれたのは、葉色(はいろ) A。


　少し垂れた柔らかい目付きなのに、やけにハッキリとした二重は僕を虜にし、へらりと笑って見せる八重歯は酷く僕の心を揺らしてくる。



「制服、似合う。可愛いよ。」

「も、もう、ヒロくんって結構ストレートに褒めるよね…！」


　たじたじになって身を扉で隠す行動にすら、こんなにも愛おしさを覚えるんだから “恋は病” って言葉は信じざるを得ない。




「あ、景光くん来てくれたの！ささ、写真でも撮りましょ！」


　Aちゃんのお母さんが様子を見にこちらを覗けば、新品であることも構うことなく僕たちの背中を押す。




　
　近くの公園まで連れられた僕たちは、2人並んで桜の樹の下に立たされた。



　正直、彼女と2人きりの写真なんて嬉しいにも程がある。


　自然とAちゃんと目が合う。

　小学生の頃と比べて、僕の方が身長は高くなった。そのせいか、僕の影は彼女を呑み込むようにして伸びている。


「ふふ、そんな見つめてどうしたの！ほら、撮るよ！ピース！」

「ううん、なんでもない。」


　カメラのレンズに視線を移せば、幸せが溢れるように、また笑顔も零れた。




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