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口に含んだ __ 3 ページ41

別の国に引っ越してから僕の心は空っぽになった。

何をするにも心ここに在らずという感じ。

相変わらずお城に閉じ込められて、日々を過ごした。


それから僕は、何もすることがなくなって仕方なく勉強をした。

本当ならAちゃんを守るためだったはずの医学を。


父と母の影響だろう。

成人してすぐに医者にはなれた。

だけど、こんな自分が誰かを救えるはずもなくて、知識を使う気もしなくて、ただ意味のない知識が増えるばかり。

ただそれだけだった。


ある日、気分転換がてら久しぶりに外を散歩すると見慣れた生垣を発見する。

小さい頃に見た赤い実だった。

懐かしくなって1つその身を口に含む。

カリッと種が不快な音を立て、僕は種を飲み込んだ。


種の音によって、いつか無機質な文字で見たこの木の名前を思い出したからだろうか。

はたまた完全なる無意識か。


僕は手にいっぱいの実を優しく噛んで、種まで余さず飲み込んだ。

少しネバっとする実の、ほんのりした甘さが口の中に広がり、Aちゃんと僕の日々を蘇らせた。






颯くんが居なくなって私の生活は色を失った。

何をするにも楽しくなくて、

どんなことをしても颯くんを思い出した。


私は明日、別の人と結婚させられる。

とてもいい人だし、国のために必要な結婚だ。

だけどどうしても受け入れられなくて。


最近、昔駆け回った庭の生垣の木の名前を知った。

可愛い赤い実をつけたあの木はイチイの木というらしい。

そしてなんとあの実の種は有毒であると。

久しぶりに外に出て赤いイチイの実を手に取った。

子供の頃は何も知らなくて、ただ甘いこの実に魅了されて。

毒を持っているなんて、ほんとに笑えるわ。


私は掌いっぱいの実を摘み一気に口に含んだ。

ガリガリと種を噛む不愉快な音が響く。

実の甘さと種の苦さが混ざった味が颯くんと私の思い出と共に喉を通った。







最低最悪で、 __ kwmr→←あの甘い実を __ 2



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設定タグ:QK , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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はるむにに(プロフ) - てけまるさん» よかった〜!!頑張るね!ありがとう! (2020年5月3日 13時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
てけまる - 最後のお話が須貝さんは、私得すぎた!!移行先のお話も楽しみにしてます! (2020年5月3日 11時) (レス) id: 3d0cdf9097 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 絹田きぬたさん» ありがとうございます!河村さんはキスというと信じているのですが、意地悪にチューって言って欲しい願望があります。笑 ありがとうございます!頑張ります! (2020年5月2日 20時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - kwmrさんのお話…もう最高でした…めちゃくちゃ悶え苦しんでます。河村さん可愛いし、かっこいいし、ずるすぎます!めっちゃ、もう言葉がまとまりません…とにかく最高です!次回作も楽しみにしております! (2020年5月2日 20時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - ちょこさん» ありがとー!!私も好き。ちょこちゃん大好き。が、頑張ります、!((笑 (2020年5月2日 19時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるむにに | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年3月24日 0時

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