あの甘い実を __ 2 ページ40
私の生活はずっとずっと暗かった。
でも颯くんに会ってから世界が変わったんだ。
今ならこんな言葉の意味がわかる。
そう、恋だった。
ある日使用人が同い年の男の子がいるのよ、そう言って颯くんを連れてきてくれた。
使用人が出て行ってから私は部屋でやけに緊張したっけ。
でもそんな不安も颯くんの顔を見たら吹っ飛んだ。
使用人の影に隠れてやってきた颯くんを見た時、私の世界が輝いた。
なんて言ったら颯くん笑うかな?
でも私にとっては運命の出会いだったから。
「颯です。よろしくね」
そう笑った彼の笑顔に私は心を奪われた。
私たちはそれからほとんどと言っていいほどの時間を一緒に過ごした。
よく2人で庭を駆け回って生垣の赤い実を食べて、使用人に怒られた。
それさえ私には全部新しくて、全部楽しくて。
2人で芝の上を転がって、芝まみれになったお互いを見て笑い合って。
「Aちゃん、あのね、僕とけっこんしてほしいです!」
「けっこん?」
「一番好きな人とずっと一緒にいよって約束することだよ」
「、私颯くんとけっこんする!ずっと一緒!」
颯くんがいたから私は幸せで、たくさんのことを知った。
嬉しいことも、悲しいことも、美味しいものも、まずーいものも、楽しいことも、つまんないことも。
全部全部颯くんがいたから。
でも、人生いちばんの悲しみだって。
残念なことに全部颯くんと知った。
鳥籠の中の私にはそう簡単には普通の生活なんて手に入れられなかったよう。
ある日颯くんに突然バイバイを伝えられた。
颯くんのパパとママが別の仲良しの国の王様のところに行くことになったんだって。
それを聞いた時、私は頭が真っ白になって、
「颯くん、もう会えないの、?」
「うん。。」
そう悲しく俯いた颯くんの顔を見ることができなかった。
「ねぇ、Aちゃん。」
「なあに?」
「大好きだよ」
そう君はとてもとても悲しく笑っていた。
私の目からは涙が滝のように流れてきて、
「ううっ、ひっく、颯くん、私もっ、大好きだよっ、」
そう嗚咽に混じった言葉を必死に紡いだ。
「Aちゃん、」
そう名前が呼ばれて顔を上げると優しく涙を拭ってくれて、優しく唇が重なった。
幼い私たちのファーストキスは、苦くてしょっぱい涙の味がした。
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はるむにに(プロフ) - てけまるさん» よかった〜!!頑張るね!ありがとう! (2020年5月3日 13時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
てけまる - 最後のお話が須貝さんは、私得すぎた!!移行先のお話も楽しみにしてます! (2020年5月3日 11時) (レス) id: 3d0cdf9097 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 絹田きぬたさん» ありがとうございます!河村さんはキスというと信じているのですが、意地悪にチューって言って欲しい願望があります。笑 ありがとうございます!頑張ります! (2020年5月2日 20時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - kwmrさんのお話…もう最高でした…めちゃくちゃ悶え苦しんでます。河村さん可愛いし、かっこいいし、ずるすぎます!めっちゃ、もう言葉がまとまりません…とにかく最高です!次回作も楽しみにしております! (2020年5月2日 20時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - ちょこさん» ありがとー!!私も好き。ちょこちゃん大好き。が、頑張ります、!((笑 (2020年5月2日 19時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるむにに | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月24日 0時