思い出の場所 (ページ29)

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気付けば、お昼過ぎてた

あの後は蘭の腕の中が心地良くて、そのまま寝ちゃった
でも、目を覚ますと同時に何故か寂しくなる

「お、起きた？」

『んー…』

「そろそろ帰らないと、マズいんじゃない？」

『んー…けど、帰りたくない』

「俺もAちゃんの事、帰したくねぇけど…携帯めっちゃ鳴ってたぜ？」

『マジか…』

体を起こして、鞄にしまった携帯を見れば、両親からの着信の嵐

まぁ、想像はついてた

けどさ…また怒鳴られたり、叩かれたりしたら…って思うと、やっぱ帰りたくないもので
でも、帰らないと更にマズい事になりそうな気がしてならない

「俺も家の前まで送ってくから、今日はちゃんと帰ろうぜ？」

『……分かった』

帰りたくないけど、これ以上蘭を困らせる訳にもいかない

絶対に蘭が私の事を自由にしてくれる事を信じて、蘭と一緒に家に帰る事にした

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家に近付くにつれて、胸がザワザワしてくる
会話も無く、昔のような時間が失われた家に戻りたくない…

俯く私を気にかけてくれたのか、蘭が優しく手を握ってくれた

「これが最後のお別れじゃないから。嫌かもしれないけど、絶対俺がAちゃんの事、自由にしてあげるから。ね？」

『今生の別れじゃない事を願うわ…』

「蘭ちゃん、守れない約束はしねぇから」

蘭の顔を見れば、自信に溢れた表情をしてた
いつも飄々としてんのに、こういう時ばっかズルいなぁ…

【A！！！！！】

突然、大声で自分の名前が街中で響き渡った

…目の前にいたのは、お母さんだった………

『っ…！』

【何処に行ってたのよ！！電話しても出ないで…！それより、この男は誰なのよ？！】

心配の欠片も無く、ただただ大声を出して1人で騒いでる

目の前にいる人が本当に自分の親なのか…と、疑いたくなる
昔はこんな感じじゃなかったのに

昔のような優しくて、笑顔が似合うお母さんはどこに行ってしまったのか…

『もう…あんな家に帰りたくない！！！！』

【バカな事を言うんじゃないの！！こんな男に何か吹き込まれたんでしょ？！いいから、早く帰るわよ！！！】

空いた片方の手を強く握られ、お母さんは引っ張るように私を蘭から引き離した

繋いでた蘭の手は呆気もなく、スルッと離れた

え……

なんで？

なんで、そんな簡単に手を離すの………

『蘭！！！！！！！！』

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