君とゼロから (ページ5)

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05 SOS ページ5

直後、背後から小さく舌打ちが聞こえたのと同時に、

私の目の前に黒いもやが現れた。

「死柄木弔、落ち着いてください。まだ話を進めるのは早いかと」

フード男とはまた別の声が

黒いもやから聞こえた。

一方、死柄木弔と呼ばれた男は、

ガリガリと強く首を掻き始め、

「うるさい。黒霧、早くそいつを連れて行け」

と、苛立ちを含めた声を出す。

「いや、しかし…この子が無個性かどうかは」

「いいから連れて行け！」

突然のフード男の大声に、私は思わず怯む。

連れて行かれる＿＿＿

脳が逃げろと叫んでいる

けれどそれに合わせて身体は動いてはくれなかった。

足が震えて力が入らない、まるで金縛りにあっている感覚だ。
　

その間にも、死柄木弔がこちらに一歩ずつ近づいてくる。

誰か……！！と声も出ないまま、

心の中で助けを求め続けた。

＊＊＊

明日は学校で体力テストがあるという。

「成績最下位の者は除籍処分とする」

そう言い放った担任＿＿相澤先生の言葉が僕の頭の中を支配して、ずっと寝むれずにいた。

時計を見ると、もう日付を跨ごうとしている。

偶然と奇跡が幾度となく重なって

僕の憧れ続けたNo.1ヒーロー、オールマイトから個性を授かった。

入学試験で初めて、僕が個性を授かったのだと自覚はできたものの、

まだそれをほとんど使いこなせてはいない。

だから今、どうしても体を動かしたかった。

個性を使って、少しでも身体を慣れさせておきたい。

最後の悪あがきかもしれないが、それでもいい。

今行動しないよりはましだ。

あの雄英高校に入学したんだ。

絶対に、今までの努力を無駄になんてしない。

0時を回った頃、僕はこっそり家を出て

多古場海浜公園へ向かった。

オールマイトと特訓の日々を重ねた、大切な場所だ。