35 ごめん ページ35
＿＿＿＿
1年前
私の両親は交通事故に遭った。
重症だった父は、医者も驚くほど回復し、交通事故前の身体にまで戻った。
しかし、比較的軽傷だった母がなぜか全く回復しないどころか、悪くなる一方だった。
「どうしてお母さんはどんどん悪くなっていくの…ねえお母さん…」
頬にコケができてしまうほど痩せ細った母に、私は尋ねた。
すると、母はなぜか私にごめんねと謝った。
「A、今まで嘘ついてごめんね。
Aは本当は無個性じゃないの。
でもこれだけは約束して。
この個性はAには使ってほしくない。
ここで断ち切りたいの。
私の個性でお父さんは助かるけど、私は死ぬ。
この運命は変えられない…。この個性を使ったら、待ち受けているのは死だけ。
あなたは大切なたった一人の娘だから……ごめんね、辛かったよね…ごめんね」
私が無個性と判定されたのは、この個性がたった一度しか使えない特別な個性だからだと、母は私に説明した。
母と私の二人きりの病室での、突然の告白＿＿
告白の後、母は私の手を握り、静かに眠りについた。
＿＿＿＿
お母さん、こんな娘でごめんなさい。
約束破ることになりそうなんだ。
だって今、大切な人が目の前で倒れてるの。
だんだん身体が氷のように冷たくなっていくのがわかる。
このままじゃ、出久が私の身代わりになって受けた銃弾のせいで死んでしまう。
だからこの個性＿＿零(ゼロ)の個性を使って、出久を元の状態に戻す。
お母さん、お父さん。最後までわがままでごめんなさい。勝手に家を出てごめんなさい。いっぱい感情をぶつけてごめんなさい。
娘の最後のわがままをどうか許して＿＿＿
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作者名：はにぃ | 作成日時：2020年6月30日 11時
