君とゼロから (ページ34)

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34 さよならページ34

死柄木はポケットから注射器を取り出した。

見るからに怪しい、緑の蛍光色の液体が入っている。

「これをあんたに打つだけで世界が変わる。お前のことを馬鹿にするやつなんてすぐに掌を返してお前に擦り寄ってくる。協力してくれるよな？」

「無個性なら私以外にもいるはずですけど、なんで私なんですか？」

「条件があんだよ。それがお前に合致した、それだけだ。分かったらさっさと腕を出せ」

私は素直に腕を差し出したが、「その前に…」と切り出し、今にも刺そうとする死柄木の動作を止めた。

「自分でけじめをつけたいので、自分で刺したいです」と告げた。

「いいなお前、気に入ったよ」

死柄木は注射器を私に渡した。

針が肌に触れるところまできて、私は動きを止めた。

私には、人と違っても、どんな境遇があっても、優し
く包み込んでくれる人がいるから

そんなものはいらない。

それに私は＿＿

腕を大きく振りかぶり、私は注射器を床に投げつけた。

破片と中の液体が飛び散る。

少しの間の後、死柄木の絶叫が響き渡った。

「お前……！なんてことしてくれたんだ！！ふざけるな！消えろ！」

死柄木の手が私に伸びてきたと同時に、大きな音を立ててドアが開く音がした。

「死柄木弔！そこまでだ！」

目には見えない速さで、オールマイトやその他のヒーローにより、死柄木と黒霧はあっと言う間にその身体は床に押し付けられ、拘束された。

「A！！」

出久の声だ。

振り返ると出久と目が合った。出久は不安から安堵の表情になり、私に駆け寄って強く抱きしめた。

「信じてたよ、A」

「出久……」

ちらりと死柄木の方を見下ろすと、

死柄木は、こちらに殺意の目を向けてきた。

「もういい……先生、力を貸せ」

『いい判断だ、死柄木弔』

突如黒い影がいくつも現れ、その中から恐ろしい形相をした化け物が出てきた。

『脳無だ！！』

『なぜこんなところに……とにかく拘束だ！』

脳無は奇声を上げながらこちらに迫ってきた。

「A逃げて！」

私はただこの異様な光景に立ち尽くしていた。

突然、『うわぁあ！』と声が聞こえて振り返ると、死柄木を拘束していたヒーローが脳無に襲われているのが見えた。

拘束を解かれた死柄木はゆっくりと立ち上がり、私に銃を向けた。

「お前はもう用済みだ。さよなら、零谷A」

銃声が鈍く響き渡り、目の前に血溜まりが広がった。