君とゼロから (ページ33)

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33 こどもおとなページ33

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「そろそろ目的を教えてもらってもいいですか」

「そうだな。無個性のあんたにしかできないことだ。これを打つだけでお前は最強になれる。もう劣等感で苦しむこともない。社会から排除されずに済む」

連れて行かれたのは、バーらしきとこだった。

ここが、死柄木の言っていた〝拠点〟なのだろう。

私はカウンターの丸椅子に座らされ、その隣に死柄木が座る。

死柄木は、目の前に置かれたお酒を一気に飲み干すと

「この社会は狂ってる。何が平和の象徴、所詮国家公認の暴力装置だ」

「偉そうにしやがって。所詮社会のゴミだ」

と、文句を垂れ流し始めた。

カウンター越しにいる黒霧をちらりと見ると、黙ったままグラスを拭いている。

私はオールマイトが好きだし、現にオールマイトのお陰で犯罪は減っているのが事実だから、

「そうですね」

と、適当に相槌を打った。

私も死柄木に似た社会の構造への憎悪は感じていたが、ヒーローは好きだ。

人を助けるだけでなく、地域の清掃やボランティア活動など、様々な活動を通してよりよい社会にしていこうと貢献している。

目立たなくても、色んな形で市民に寄り添う姿はかっこよくて尊敬する。

だから、何で死柄木がそんなに当たり散らすのか分からない。

直接何かされた訳でもなさそうなのに、と思いながら私は黒霧が用意してくれたコーヒーを飲んでいた。

「あいつは救えなかった人間などいなかったかのようにヘラヘラ笑っていやがる、おかしいと思わないか？俺らみたいな人間は悪とみなし、あいつが振るう暴力は美談になる」

死柄木の話を聞くと、社会そのものよりも、ただオールマイトに対しての差別感情があるように思えた。

「それに加えて、俺の手下は使えないやつらばっかりだ！なんでいつも思い通りにならない！」

死柄木がカウンターを揺らし、お酒がグラスから溢れた。

「…組織を大きくしないんですか？」

素朴な質問が浮かんだので聞いてみると、死柄木は、

「俺がこの手で終わらせる。使えない奴はいらない」と答えた。

使えないと言っている割には、常に手下である黒霧を引き連れているし、ただ口先だけの目標で動いている死柄木はまるで子供だった。

すぐに他人のせいにする人は、何でも自分の思い通りになると思っているのかもしれない。