26 新しい生活 ページ26
それからの沈黙が気まずく感じたので、
「私、今日はネカフェで泊まることにしたよ、じゃあ…また明日ね」と声をかけた。
「うん、じゃあね。また明日」
久しぶりにメールを開くと、件名に「学校に来てください」とあり、本文には長々と読みづらい文章が連ねられていた。
私はもちろん返信することはなく、ゴミ箱のアイコンをタップした。
電話には父と学校からの電話で溜まっていたが、どうしても折り返す気になれなかった。
＿＿＿
翌日の月曜日、今日は記念すべき初バイトの日だ。
基本7時〜16時まで、休憩2時間で週4〜5日ほど働くことになる。
「通信制の高校に通っている」と嘘をついて、このスケジュールにしてもらうことができた。
もし家出をしていなかったら、あり得ない生活だなあと思う。
行くはずだった高校は、一週間前から授業が始まったが、一日行っただけで、もうその外観や教室は私の記憶から消えつつあった。
まだ薄暗い6時過ぎ、ネットカフェを出て雄英に向かう途中、ズボンのポケットに入れている携帯が鳴った。
画面を見ると『オールマイト』と表示されていた。昨日の住み込みの件かもしれない。
「もしもし？」
『おはよう。今向かっているところかな？住み込みの件なんだけどね、OKだってさ！雄英の寮を借りるといいよ』
「ほんとですか！？ありがとうございます！」
『そういうことだから、今日のバイトが終わったら、職員室においで』
「はい！ありがとうございます！」
通話が切れると、思わず握り拳を作り、「やった」と私は小さく声に出した。
髪をもう一度整え直してから「おはようございます！」と食堂のドアを開けると、既にキッチンに人が見えた。
コック帽を被り、口からホースのようなものが背中に流れているその独特の見た目で、すぐに誰か分かった。
「お、早いね〜！あ、俺はクックヒーローランチラッシュ！雄英の食堂担当さ！」
「ぞ、存じています！零谷Aです！ご迷惑をおかけするかもしれませんが、今日からよろしくお願いします！」
「うんうん！零谷さんね！聞いてるよー！勉強もあるのに偉いねえ」
「いえ……！精一杯頑張ります！」
「うん！一緒に頑張ろう！じゃあまずは掃除から、その後仕込み、昼休みは生徒と一緒に休憩ね！で、また掃除。一日の流れとしては大体こんな感じかな！なにか質問ある？」
「大丈夫です！」
「了解！じゃあまずは掃除からしようか！」
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作者名：はにぃ | 作成日時：2020年6月30日 11時
