14 雨 ページ14
私は手を震わしながら、口元を抑えていた。
「……！はい、そうです！あの私…零谷Aって言います。夜中はありがとうございました」
まさかこんなに早く再会できるなんて思いもよらなかった。
三奈といい助けてくれた男の子といい、再会の奇跡が続く。
『…えっと、Aさん…あれから、大丈夫でしたか？』
電話越しでも真っ先に心配してくれるなんて
本当に優しい人なんだなあと思う。
「大丈夫です。あの…えっと…」
あれほど反復練習した言葉は全部どこかに飛んでいき、言葉に詰まってしまった。
少しの沈黙の後、三奈の明るい声が聞こえた。
『とりあえず今日会いなよ！授業は16時に終わるから、Aは校門で待ってて！今日緑谷なんか用事ある？』
『僕はないけど…。Aさんは…？大丈夫？』
三奈はこうして助け舟を出してくれることが度々ある。
結局今も、三奈に頼りっぱなしだなあと思いつつ、
「私も大丈夫ですよ」
と言って、ありがたく三奈の好意を受け取ることにした。
16時に授業が終わると聞いたけど、私は10分ほど早く校門の近くに着いてしまった。
『雄英ってやっぱすごいよね〜』
『ヒーロー科の人たちみたけどやっぱレベル違うわ〜。てかイケメンいなかった！？赤と白の髪の毛の…』
校門から出ていく生徒たちの顔は
みんなキラキラしていて、眩しくて、
羨ましいなと思った。
それに比べて私は、ここまで来て何をしてるんだろう
と、ふと考え込んだ。
一人になると、
いつもこうして急に現実に引き戻されて、考え込んでしまう。
もしかしたら、私もあのキラキラとした空間に入れていたかもしれないなあなんて考えていると、
「ん！」
睫毛に冷たい何かが当たった。
そして、それはだんだん
強くなっていった。
『雨降ってきた！』
『うわ最悪傘忘れたー！ごめん入らせて〜』
『えーせっかく今日友達と遊ぶ約束してたのに！』
『だるいから親に迎えに来てもらうわ』
みんな次々に、文句やため息混じりに傘をさす。
それは私もだ。
彼との初めての待ち合わせが雨だなんてついてないなあと思う。
傘を取り出そうとリュックの中を探すも中々見当たらない。
その間にも、靴下に雨が染みてきて、ものすごく不快だった。
ふと、雨が止んだと思ったら、
「大丈夫ですか？」
と、少し上から声が聞こえた。
＿＿＿あの男の子だ
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作者名：はにぃ | 作成日時：2020年6月30日 11時
