No.73 柔軟な発想 ページ27
*美染 side*
「んで、話戻すけどさ。何について悩んでるの?」
改めて柔造にそう問いかけられた私は、自分の包帯だらけの腕に目をやる。
そして、ゆっくりと言葉を並べていった。
「今日、A組の人たちを治療しようとしたら……みんな、私がいきなり自分の腕を切ったことにびっくりしてて。これがもし、小さい子供とかお年寄りの人相手だったらって考えると……怖がらせちゃうのかなと、思って」
ヒーローは、市民を安心させる存在じゃないといけない。
それなのに……このままではむしろ、私が不安を与えてしまうような存在になってしまう。
「あー……確かに、いきなりナイフ取り出して自分切り始めたらビビるかもな」
「やっぱりそうだよね……」
改めて自分の腕を見つめていると、柔造が何か思いついたようにこんなことを質問してきた。
「なぁ、確認なんだけどさ。薬使の"個性"って、血の量は薬の効果に関係してる?」
「? ううん、関係無いけど……」
「ならさ。治療をする時は、小さい針とかでちょっと指先から血を出すとか……ナイフ以外の物でやるっていうの、考えてみてもいいんじゃないかな」
柔造からのその提案に、私は目を瞬かせた。
「すごい……なんで思いつかなかったんだろ、私」
「薬使は真面目だけど、ちょっと頭が固いとこあるからね。俺の柔軟な発想が少しでも役に立ったんなら、嬉しいんだけど」
そう言う柔造に、私はこくこくと頷く。
「すっごく役に立ったよ。助かった」
「そう? なら良かった」
私の頭をポンポンと軽く叩き、柔造は小さく微笑む。
「また困ったことあったら、いつでも力になるよ」
「うん……ありがとう」
こんなことを言ってくれるクラスメイトがいて……私、幸せ者だな。
こっそりと小さく笑みをこぼしていると、いつの間にか私の家に到着していた。
「あ、ここが家」
「へぇ、立派な家だな。って……“管”?」
表札の苗字を見て、柔造は声を上げる。
「……あ、もしかしてブラド先生と一緒に住んでるの?」
こくりと頷いて応えると、柔造は「なるほどね」と納得したように受け入れた。
「確かに、ブラド先生が面倒見てるって最初に言ってたな」
一瞬そこを詮索されるかと思ったけど、柔造は何も聞かずに「また休み明けに」と去っていった。
気を遣ってもらったのかな……などと思いつつも、私は家の鍵を開けて中に入った。
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空文 晴霧(プロフ) - うり太郎さん» 何回目だろうと大歓迎です! ありがとうございますm(_ _)m 物間くん良いですよね!!! うちの美染ちゃんは強い子です(笑) (2021年10月6日 23時) (レス) id: 623713d1fa (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - 物間、カッコイイぞ!って思ったら・・・美染ちゃん強え。続き毎回めっちゃ気になります!この作品はもっと伸びるべき!!因みに私、物間推しなのでくっついてくれるとウレチイ|´-`)チラッ2回目のコメント失礼しました!これからもニマニマしながら読ませて頂きます! (2021年10月6日 12時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
空文 晴霧(プロフ) - しゃけふれーくさん» ありがとうございますー! もう無いなら自分で書いちゃえと思って書き始めました(笑) これからも応援よろしくお願いします! (2021年9月6日 20時) (レス) id: 623713d1fa (このIDを非表示/違反報告)
しゃけふれーく - コメント失礼します!!B組の小説があまり無かったので本当に嬉しいです!!これからも頑張って下さい!応援しています!! (2021年9月6日 20時) (レス) id: 60a68be70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空文 晴霧 | 作成日時:2021年9月5日 15時