素直になれたら。【上鳴電気】 ページ1
教室に入ろうとしたとき、聞きなれた女の子の声が耳に入った。あ、Aちゃんだ。机に伏せている上鳴くんの目の前で足を組み、頬杖をついて、不機嫌そうにしていた。何をしているんだろう。
立ち止まって入るのを少し躊躇した。一方的に文句を言っているような彼女の様子に、なんだか嫌な予感がした。
「この問題、まだ終わんないの？もう中学から勉強やり直した方がいいんじゃない？」
「うう、わかってるって……。でもよ、いやほんと、全然わかんねーんだよな……」
「よく雄英入れたよね。あ。もしかして…」
「いや、正々堂々入ったって！それだけは言えるぞ！！」
「いいからさっさと解く！私も暇じゃないんだよ」
「悪い…」と上鳴はおとなしく机に向き直る。さっきから手はほとんど動いていない。これじゃあ、勉強の意味なんてないんじゃないかな。Aちゃんも丁寧に教えている風ではなく、ただただじっと上鳴くんを睨みつけていた。見ていられなくなって、ついにドアを開けた。
「やっほー！」
私が急にひょっこりと顔を出し大きな声をだしたことで、驚かせてしまったらしく、二人とも目をまんまるにしてこちらをみていた。
「麗日か」
「なんだ、ビックリしちゃった。お茶子だったのかぁ、良かった」とAちゃんはホッと息をついた。それもさっきまで人を睨み付けていたとはとても思えないくらい気の抜けた表情でだ。「うん、私だよ！ビックリさせちゃった？ならごめんね」と謝る。「全然、大丈夫だよ」と微笑む様子は可愛らしくてやっぱり、さっきまでの様子がまるで嘘のようだった。
よしっ。と気を取り直して前を見る。
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作者名：あくあ | 作成日時：2018年5月18日 0時
