刹那の間【ヒロアカ】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:980 hit

あなたの好きなところ【爆豪勝己】ページ5

ふとしたとき、ああ彼のことが好きだなと思う瞬間がある。
プライドが高いのはもちろん、傲慢だしぶっきらぼうで意地っ張りだしみみっちい。
優しいところがあるならともかくそんな様子もほぼない。

正直、性格は良いとは言えないし素直じゃないし目付きも悪いし、きっとその辺の敵よりも悪人面してるし良いところなんて全然ない。上鳴くんがクソを下水で煮込んだような性格と称すのも理解できる。
それでも好きだなと思う瞬間があるのだ。

「ばくごうくん」と声をかけても振り向かず、彼はすたすた歩いていってしまう。「ばくごうくん、」とさっきよりもはっきりとした発音で言ってみる。ばくごうくん、ばくごー、かっちゃん、かつき、。色んな名前で呼んでいるとなんだかおかしくなってきて、ふふ、と笑みがこぼれた。すると何度名前を呼んでも振り返らなかった彼がようやくあきれて不機嫌そうな顔をしながら振り向いた。

「てめぇ、なに笑ってんだよ。」
「ううん、別になんもないよ」
「ぁあ゛？意味わかんねー。とうとう頭狂ったんじゃねぇの？」
「爆豪くんにだけは言われなくないよ！」
「ケンカうってんのか。テメェは。」
「うってませーんよ」
なんて言い合いをしているとかっちゃんは言い返すのも疲れたのか更にあきれたような顔をしてまたすたすたと歩いて行ってしまう。待って。おいてかないで。あわてて追いかける。
どうして今、彼と一緒にこうして帰っているのか、帰るようになったのかはよく覚えていない。ある日、私が居残りして帰りが遅くなったら彼もまだ残っていて急に「おい、お前。帰んぞ」と言われてからだっけ。

そうしていくうちに、より深く知った将来ザ・亭主関白になりそうな爆豪勝己という男は想像通りの人物だった。クラスメイトからも一目おかれているがそれはまた、良い意味とだけは決して言い難い。でも、いつのまにかクラスには馴染んできたようで。特に切島くんとは行動を共にするくらいに。

また、名前を呼ぶ。無視される。それでも後ろをついていく。