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ふたり ページ35

たどり着いた家の扉はきちんとしまっていて
鍵がかかっていない事でAが開けたのが伺える
肩でしている息を落ち着ける暇もなくその扉を乱雑に開ければそこには蹲るAが。
酷く泣いたであろう目は赤く充血が始まっており呼吸だって依然荒いまま。
手探りで見つけ出した電気のスイッチを入れれば見慣れた玄関が視界に広がる。

萩「A…ごめん、怖かったね、もう平気だよ」

荒い呼吸をどうにかしてやりたくて
脱衣所に靴も脱がず走ってタオルを取る。
それを未だにほんの少しの落ち着きも戻らぬ
Aの口に当ててやる。

萩「ごめん、俺が馬鹿だった、1人にしなきゃ、ごめん、ごめん。」

「ん、大丈夫……20歳超えたいい大人が…1人で…どこにも一人で行けない方が……変だよ
だから、研二のせいじゃない……大丈夫」

タオルは空気を吸い込みにくい、
だから過呼吸を落ち着かせるにはもってこいだ。
そんな考え通りに落ち着きを取り戻したAは目は赤く充血して酷く疲れた様子で笑う。
それがどれほど痛々しく見えるかきっとAは知らない。
その笑顔がどれほど俺の胸を締め付けるのかAは知らない。
松田と一緒じゃなきゃいけなかった夜を一緒に過ごせるようになった、
松田と一緒じゃなきゃ寝れなかったのを一緒に寝れるようになった、
1人で出歩けなかったのが1人でも平気になった
そうやって少しずつ克服してきているけれど
松田以外の前で泣かないのは依然変わらなくて
どこかで線引きされていてこれ以上は松田しか踏み込むことの出来ない世界だと教えられているようで悔しかった。
いや、悔しいというより情けなかった。
好きな子1人甘えさせてやれない自分の不甲斐なさ。
きっとAは1人で抱え込んでしまっているその全てと向き合っている。
きつくても辛くても逃げずに向き合っているのだろう。
松田はそれを支えて助けて分かち合うことが出来る
手を繋いで隣でAを支えて助けてやれるのだろう
けれど、俺は。

萩「…ごめん、ごめんなぁ…ごめん、ごめん。」

何も出来ない。
戦っているAの後ろ姿を傍観するしか出来ない。
それなのに一緒に頑張ろうなんて言葉をかけて
松田のそばがAにとっての1番の安心できる場所と知っていながら引き離した。

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Hrry(プロフ) - ほのかさん» 幸せにします!絶対!ありがとうございます!! (2019年10月19日 19時) (レス) id: 94eb334c47 (このIDを非表示/違反報告)
ほのか - 夢主さん、頑張って!胸がギュってなるぅ・・・。凄く切なくなるけど、幸せなラストを待ってます!Hrryさん、頑張ってください! (2019年10月16日 22時) (レス) id: 949a14dbde (このIDを非表示/違反報告)
Hrry(プロフ) - 頑張ります!!今から分岐に向けてラストスパートです!!! (2019年10月16日 17時) (レス) id: 94eb334c47 (このIDを非表示/違反報告)
ぽこぽん(プロフ) - 続編来ましたね!!Hrryさんの小説、大好きです!此れからも楽しみにしてます!無理しない程度で頑張って下さいね♪v(*'-^*)^☆ (2019年10月13日 21時) (レス) id: b37f06fbda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Hrry | 作成日時:2019年10月13日 15時

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