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好きな子 ページ25

電話から聞こえる声は普段よりも少しだけ
大人っぽく落ち着いた声で
先程松田が話したAとは思えぬほどで。
両親が目の前で射殺されたことで抱えた
大きなトラウマなどどこにも感じさせなかった。
いやむしろ、抱えるなという方が無理なのに
それを微塵も感じさせないAが変なのか。

「じんぺー」

ドクン、と心臓が一際大きく波打ったように
感じた。それは、言わいる嫉妬、と言うやつで
研二と呼び捨てで呼ばれるのは俺だけだったはずなのにと柄にもないことを思う。
呼ばれ方などAを好きになって初めて気にした。
今までだって付き合ってきた子が違う男を呼び捨てにしようがあだ名で呼ぼうが
全く気にしなかったというのに。
それほどに惚れ込む魅力がAには溢れていた。
芯の強いところが好きだ。
前向きな考えをするところが好きだ。
いつだって全力で一生懸命なところが好きだ。
笑顔で溢れている幸せそうなところが好きだ。
彼女のサラサラな髪も柔らかい肌も大きな瞳も
優しい声もAという可愛らしい名前も好きだ。
真面目で時折それが過ぎて自分を大切にしない所もあるけれど。
それだって彼女らしいと受け止めてきた。
誰にだって胸を張って言えるほど俺はAが好きなのだ。
それなのに、今どうして彼女の隣にいるのは俺じゃないのか。

「私、強くならなきゃって思った。
お母さんの強くなりなさいって言葉で
そうならなきゃって思ったの、
私のためになら死ねると言ったお父さんの様に
あんな状況で笑ったお母さんの様に強く、って
じんぺーにだけ弱さを見せれたのはきっと
お母さんにとってのお父さんだったり
お父さんにとってのお母さんだったりって
存在があったから。
甘えられる存在があったから、二人にも。
それが陣平だったんだと思う、そばにいたし。
けど、私考えたんだよね、散々。
やっぱお母さんとお父さんが死んだのは悲しいし立ち直るのには時間がかかりそうで…
怖いって思うのもやめれなそう」

松「強くなるには時間がかかりそう、ってことか?」

電話越しに聞こえる声だけじゃAが
今どんな表情なのかなんて分からない
2人は今、手を繋いでいるのかもしれないし
抱きしめあってるのかもしれないし
そんなの思い込みで向き合って話をしてるだけかもしれない。
なにも分からない蚊帳の外が辛い。

好きな人→←好きな女



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Hrry(プロフ) - ほのかさん» 幸せにします!絶対!ありがとうございます!! (2019年10月19日 19時) (レス) id: 94eb334c47 (このIDを非表示/違反報告)
ほのか - 夢主さん、頑張って!胸がギュってなるぅ・・・。凄く切なくなるけど、幸せなラストを待ってます!Hrryさん、頑張ってください! (2019年10月16日 22時) (レス) id: 949a14dbde (このIDを非表示/違反報告)
Hrry(プロフ) - 頑張ります!!今から分岐に向けてラストスパートです!!! (2019年10月16日 17時) (レス) id: 94eb334c47 (このIDを非表示/違反報告)
ぽこぽん(プロフ) - 続編来ましたね!!Hrryさんの小説、大好きです!此れからも楽しみにしてます!無理しない程度で頑張って下さいね♪v(*'-^*)^☆ (2019年10月13日 21時) (レス) id: b37f06fbda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Hrry | 作成日時:2019年10月13日 15時

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