せーんぱっ！？2

ふたつでひとつ ページ44

有給消化最終日、互いの鍵に付けた
イルカたちは並べられてハートの形になっている。
その姿はキスをしているようにも見えて。

｢あーー、明日から仕事だなぁ、やだぁ｣

諸｢俺も。楽しすぎたからなぁ｣

本当にここに来て毎日が楽しかった。
怖かったけれど手を繋いで歩いた水族館も
小動物に好かれまくっているヒロさんを見ていた動物園も。遊園地だって、全部。
ショッピングで色々と高価なものまで買ってもらった時はさすがに罪悪感がすごかったけれど。
お巡りさんの給料舐めたらダメだよ、と言われたが私だってお巡りさんだし。
なんなら警部補の、階級で周りよりは貰ってる。
もっと言えば陣平や研二や航さんよりも。
さすがに給料自慢もしたことがなければ比べたこともないから公安でいくら貰うのかは知らないけれど。相場くらいはわかっている。

｢本当に、楽しかった｣

しみじみと今期最後の別れかと思わせるような声が出た。
ちょっとだけ寂しさがあるのは否めない。

諸｢なぁ、A｣

名前を呼ばれながら、目の前の机に置かれたのはココア。私のために買い置きされているやつだ。
きっとこのココアを飲めば寝る流れ。
この有給消化中でヒロさんは寝る前に必ずココアを入れてくれた。

｢なぁに？｣

諸｢今度大事な話するから、覚悟してて｣

｢今じゃ、ダメなの？｣

諸｢フェアじゃないからな、また今度。｣

フェア、とは。
一体誰となのだとか聞きたいことは山ほどあるけれどきっとこの先は教えてくれない。
ニィ、と笑ったヒロさんのこの表情は聞いても無駄だと知っている。
わかった、とだけ返事をして無言が流れる。
けれど居心地の悪さなど感じない。
ものすごく暖かい、この空間は。

明日からの仕事だって頑張れそうだ。
お互いにそうなのだったらいいな、と
目をつぶって微睡みに身を任せた。

ブーゲンビリア→←ふたつでひとつ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す