せーんぱっ！？

せん、ぱ、い。 ページ40

じわりじわりと、何かあったかい感覚。
それは時折手に触れていたり頭に触れたり
頬を撫でたり額に一瞬だけ触れた時もあった。
光を遮断しているまぶたは酷く重たくて
どうやってもあかないからそうそうに諦めた。
口を開いて言葉を紡ぐのも億劫で諦めた。
けれどその感覚だけは消えることはなくて。
場所を変え、多少なりの形を変え？
いつもどこかに触れていた。
酷く安心する優しい温かさだ。
私はこれがなになのか、きっと知ってるのに
思い出せないままでいた。

また、ほら。
手に重ねられた温もりが気持ちいい。
ガヤガヤと賑やかさも心地いい。
よく知っているような、そんな感じ。
もうそろそろまぶたをこじ開けて
この温もりの正体を知りたいのだけど
気持ちよさが勝って意識が沈もうとする。
もう少し、寝ていたい。
だって、起きていたら痛いんだもの
身体中に激痛が走っていくんだもの。
引き攣られるような皮膚の痛みだったり
動かしてもないのにズキズキと痛んだり
息を吸い込むのだって痛い。
指一本、うごかすことも、
瞬きひとつだってしたくない。

ああ、この痛みはなんでだっけ。
私何したんだっけ。
…もうどうでもいいか。
寝てしまえばいい、そしたら全部忘れられる
痛みも、このなんとも言えないような温かさも
起きなきゃいけないと思う気持ちも
この怪我の原因だって。

どうだっていい。



けれど、
ガヤガヤと心地のいい騒がしさの中で
ふっと、温もりがいなくなるのは少し嫌だ。
手から離れていきそうな温もりを
動かしたくもない手で握りしめた。

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